口蓋扁桃摘出術は耳鼻咽喉科医にとって施行頻度の高い手術手技の一つである。これまで術後出血の危険因子として、男性、術者の経験年数、習慣性扁桃炎などが報告されているが、加齢と術後合併症の関連についての報告は少ない。今回、われわれは、慢性扁桃炎に対する口蓋扁桃摘出術症例に対し、加齢と手術時間や在院日数との相関因子などについて後ろ向き検討を行った。対象は 2016 年 1 月から 2019 年 4 月までに口蓋扁桃摘出術を施行された 295 例のうち、慢性扁桃炎と診断された 115 例を対象とした。また、予備的研究として病理学的検討も行ったが、術後合併症の因子として、癒着の程度や年齢といった患者側の因子や術者の技量だけでは説明が困難であった。これまで経験的に年齢の高い慢性扁桃炎患者は手術時間が長くなり、術後経口摂取も困難で、在院日数も長くなる印象があったが、本研究では若年層との比較においてその統計的有意差は認めなかった。