腸腰筋膿瘍と深頸部膿瘍を合併した症例を経験したので報告する。症例は 85 歳男性で、担癌状態でコントロール不良な糖尿病を既往に持つ症例であった。当初は感染症内科で腸腰筋膿瘍の治療を行われていたが、DIC から脱却できず臨床症状は改善しなかった。 経過観察中の造影 CT 検査で深頸部膿瘍を認め、済生会福岡総合病院で緊急で切開排膿、ドレナージ術を施行することとなり、その後は軽快に向かった。腸腰筋と頸部に膿瘍形成を認めた症例は報告されておらず、まれな病態であるが、高齢化が進んでいる現在において複数部位に感染が起こり得ることを念頭におく必要がある。