耳鼻と臨床
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67 巻, 5 号
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原著
  • 中川 千尋, 小林 茉莉子, 森下 大樹, 矢口 凌平
    原稿種別: 原著
    2021 年 67 巻 5 号 p. 285-288
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    2001 年から 2020 年までの 20 年間に、横浜市栄区民で後天性真珠腫に対して初回の手術を受けた頻度は人口 10 万人当たり年間 3.2 件と推測された。栄区の面積は 18.55 km2、人口 12.2 万人である。本研究は後天性中耳真珠腫で初回に手術を受けた者を対象とした。先天性真珠腫、外耳道真珠腫、コレステリン肉芽腫、再発した中耳真珠腫は対象から除外した。また両側真珠腫は 1 例とカウントした。栄区民の真珠腫患者はほぼすべて当院を受診する。このことから手術適応となる真珠腫の頻度を算出することができた。

  • 熊井 良彦, 伊勢 桃子, 折田 頼尚
    原稿種別: 原著
    2021 年 67 巻 5 号 p. 289-295
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    当科(熊本大学)での緊張部型真珠腫の術後成績を後方視的に検討すると、成功例は、伝音再建が不応であった例を除くと、Stage Ⅰが 75%、Stage Ⅱが 75%、Stage Ⅲが 50%、全体で 70.0%であり、他施設に遜色ない結果であった。段階手術 2 回目で、再形成再発は認めなかったが、遺残性再発は 8 例に認め、そのうち 6 例はアブミ骨周囲に認めた。一方観察期間(2 年から 2 年 11 カ月、平均 2 年 9 カ月)の間に、段階手術終了後の、遺残性再発および再形成再発はいずれも認めなかった。緊張部型真珠腫は早期にアブミ骨周囲の高度破壊を来すこと、またアブミ骨の病変の程度で S2 症例は、S1 症例に比べて統計学的に有意に遺残性再発を来す可能性が高く、初回手術における内視鏡を用いた十分な清掃、遺残再発の確認の必要性が確認された。

症例報告
  • 原田 里佳, 野田 哲平, 空閑 太亮, 小宗 徳孝, 土橋 奈々, 松本 希, 中川 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 5 号 p. 296-300
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    中頭蓋より発生し中耳進展した髄膜腫の 1 例を経験した。髄膜腫はクモ膜細胞より発生する良性腫瘍でクモ膜顆粒の分布領域に沿って発生しやすいとされており、頭蓋外に発生する頻度は低く中耳腫瘍として経験することは少ない。本症例は、難聴を主訴に耳鼻咽喉科を受診したところ中耳腫瘍を指摘された。当院での画像所見および組織生検時の術中所見から、中頭蓋窩髄膜腫が上鼓室天蓋を介して中耳進展を来したと考えられた。中頭蓋窩法を併用した乳突洞削開を行い、中頭蓋窩腫瘍、中耳・乳突洞内の腫瘍を全摘し得た。

  • 平野 良, 鴫原 俊太郎, 野村 泰之, 大島 猛史
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 5 号 p. 301-306
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    脳表ヘモジデリン沈着症は鉄(ヘモジデリン)が脳表、脳実質に沈着することにより神経障害を来す疾患であり、原因としてくも膜下腔における慢性の出血や繰り返す出血が考えられている。臨床症状としては感音難聴、小脳失調、錐体路徴候、認知機能障害などの症状を来すことが知られており、症状は進行性かつ不可逆性である。治療法としてキレート薬、副腎皮質ステロイドの効果があるとする報告もあるが、現時点での治療法は明確ではない。今回われわれは MRI にて脳表ヘモジデリン沈着症と診断された感音難聴に対し副腎皮質ステロイド内服加療で改善を認めた 1 例を経験したので報告する。

  • 大塚 雄一郎
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 5 号 p. 307-312
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    血液疾患に伴う鼻出血は止血困難な上に、急変の可能性があり早期診断が重要である。出血傾向の身体所見として紫斑が広く知られているが、鼻出血診療において紫斑の確認はあまり活用されていない。鼻出血を主訴に受診し、紫斑が診断の一助となった血液疾患 5 例について報告する。症例 1:71 歳男性、急性骨髄性白血病。症例 2:71 歳男性、悪性リンパ腫に伴う血小板減少性紫斑病と左鼻腔の神経線維腫。入院後に出血性ショックと敗血症で急死した。症例 3:72 歳男性、血小板減少性紫斑病。症例 4:2 歳 10 カ月男児、血小板減少性紫斑病。症例 5:2 歳 9カ月女児、ループスアンチコアグラント陽性低プロトロンビン血症。鼻出血診療において紫斑の確認が推奨される。

  • 大塚 雄一郎
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 5 号 p. 313-317
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    アミロイドーシスは、線維構造を有する特異的な蛋白であるアミロイドがさまざまな臓器に沈着して障害を来す疾患である。過去に報告が少ない鼻副鼻腔の限局性アミロイドーシスを経験したので報告する。症例は 47 歳男性、右鼻閉と反復する右鼻出血を主訴に来院した。CT と MRI で右副鼻腔に軟部陰影を認め、内視鏡手術を行い病理検査でアミロイドーシスの診断に至った。多臓器所見はなく限局性アミロイドーシスと診断した。 鼻副鼻腔のアミロイドーシスに特徴的な CT 所見として “fluffy calcifications” (フワフワした石灰化)を呈するとの報告があり、本症例でも同所見を認めた。 “fluffy calcifications” は副鼻腔アミロイドーシスの特徴的所見かもしれない。

  • 木田 裕太郎, 松尾 美央子, 次郎丸 梨那, 橋本 和樹, 若崎 高裕, 安松 隆治, 中川 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 5 号 p. 318-324
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    BCG は、抗酸菌の結核菌群の一つである Bacillus Calmette-Guerin 菌を弱毒化したワクチンである。結核発病予防や膀胱癌治療に広く使用され、有効性は高く有害事象は少ない薬剤であるが、まれに重篤な感染症を引き起こし、診断や治療に難渋することがある。本症例は 84 歳の男性で、BCG 膀胱内注入治療から約 1 年後に左頸部に BCG リンパ節炎を発症した。2 カ月間の抗結核剤投与を行ったが、徐々に皮膚が自壊し深頸部膿瘍となったため、デブリードメントを行った。その後も抗結核剤の投与を持続していたが、デブリードメントから約 2 カ月後に感染性頸動脈瘤にまで発展した。BCG 感染症は、そのまれさ故、確定診断がつけにくく、その上治療法も確立していないため、治療にも難渋することがある。今回われわれは、BCG 感染症を経験し、その診断方法と治療方法について若干の文献とともに報告する。

  • 宮本 雄介, 村上 大輔, 小山 徹也, 中川 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 5 号 p. 325-328
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    腸腰筋膿瘍と深頸部膿瘍を合併した症例を経験したので報告する。症例は 85 歳男性で、担癌状態でコントロール不良な糖尿病を既往に持つ症例であった。当初は感染症内科で腸腰筋膿瘍の治療を行われていたが、DIC から脱却できず臨床症状は改善しなかった。 経過観察中の造影 CT 検査で深頸部膿瘍を認め、済生会福岡総合病院で緊急で切開排膿、ドレナージ術を施行することとなり、その後は軽快に向かった。腸腰筋と頸部に膿瘍形成を認めた症例は報告されておらず、まれな病態であるが、高齢化が進んでいる現在において複数部位に感染が起こり得ることを念頭におく必要がある。

  • 照喜名 玲奈, 平塚 宗久, 上原 貴行, 山下 懐, 鈴木 幹男
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 5 号 p. 329-333
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cellhistiocytosis:以下 LCH)はランゲルハンス細胞が単クローン性に増殖する原因不明の疾患で、罹患率は 1-2 人/100 万人とまれである。今回われわれは、眼窩より発生した LCH の小児例を経験したので報告する。症例は 5 歳の男児。1 カ月前より左眼窩の腫脹を生じ急速な増大を認め、近医総合病院を受診。眼窩由来の悪性腫瘍を疑われ、精査・加療目的に紹介受診となった。当院初診時には、左眼窩外側の骨破壊および左外眼角部皮膚は自潰し易出血性腫瘤の露出を認めた。MRI 画像では外直筋や眼窩脂肪織との境界不明瞭な腫瘍を認め、PET-CT では眼窩腫瘍に一致して高度集積を認めた。生検術を施行し、壊死傾向の強い好酸性細胞質を有する異型細胞が存在し、免疫染色にて CD1a および CD163 陽性所見を認めた。以上より LCH の診断となった。臨床的には LCH 単一臓器限局型の診断となり、プレドニゾロン内服単独治療(60 mg/m2/day から漸減)を開始し、腫瘍の著明な退縮と良好な経過を得た。

  • 前原 宏基, 澤津橋 基広, 梅野 悠太, 西 龍郎, 坂田 俊文
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 5 号 p. 334-338
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    4K-3D 外視鏡システムは、高精密デジタル画像で 3D 専用眼鏡を使って、術野を微細かつ立体的に観察でき、耳鼻咽喉科領域では、顕微鏡下に手術を行う鼓室形成術や喉頭微細手術、頭頸部のマイクロサージェリー手術に適している。今回、4K-3D 外視鏡システムを使用し、鼓室形成術、喉頭微細手術、甲状腺葉切除術に使用したので、その特徴について報告する。このシステムは、顕微鏡下手術に比べ、助手だけでなく、見学者にも複数で立体画像を共有しながら手術が可能であるため、教育の面だけでなく、さまざまな利点があり、耳鼻咽喉科領域の手術補助機器として大変有用である。

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