2022 年 68 巻 6 号 p. 430-436
Ramsay Hunt 症候群による右迷走神経麻痺で摂食・嚥下障害を呈した 1 例を経験した。甲状軟骨形成術Ⅰ型(以下、Ⅰ型)の前後で咽頭残留、penetration aspiration scale を比較したが、Ⅰ型単独では、改善は限定的であった。Ⅰ型術後に通常姿勢、頸部回旋位、頬杖位で咽頭残留を比較した結果、頬杖位で最も咽頭残留が少なかった。また、頬杖位では誤嚥がなく、頬杖位で経口摂取獲得に至った。通常姿勢の下咽頭通過側は、患側優位から健側優位に変化した。声帯麻痺以外にも右咽頭筋麻痺、右軟口蓋麻痺がみられたことでⅠ型単独での効果が限定的になったと考えられる。また、頸部回旋位で食塊の健側への誘導が困難な場合には、頬杖位での摂取を試みる価値があり、継続的に使用することで通常姿勢における嚥下においても改善が期待し得る。