2024 年 70 巻 6 号 p. 357-365
鼻副鼻腔低悪性度非腸管型腺癌 (low-grade non-intestinal type sinonasal adenocarcinoma:LG-non-ITAC) の 1 例を経験した。症例は 77 歳、女性。左鼻腔を充満する腫瘍に対し内視鏡下切除を施行した。切除断端は陰性で、術後 1 年半以上経過しているが再発を認めていない。術前診断で鼻副鼻腔腺癌を疑う場合、切除断端陽性の non-ITAC 症例は予後不良であるため、切除断端が陰性となるような術前プランニングが重要と考える。その上で、切除が可能であれば、内視鏡下切除は侵襲が少なくよい適応と考えられた。術前血管塞栓術は腫瘍への栄養血管を塞栓することで、術中出血の減少による内視鏡下の視野確保および腫瘍容積縮小に寄与し、確実な腫瘍切除の一助となり得ると思われた。