抄録
甲状咽頭筋と輪状咽頭筋からなる下咽頭収縮筋の特性について検討した。その結果、甲状咽頭筋と輪状咽頭筋は肉眼的形態、安静時および嚥下時の筋活動様式、筋線維の走行様式、筋線維タイプ構成などの点で極めて対照的な特性を示した。また、他の骨格筋との比較でも特に輪状咽頭筋は形態的、機能的、組織化学的に特殊な筋と位置づけることができる。一方で、甲状咽頭筋と輪状咽頭筋の問での特性の違いは漸次移行しており明らかな境界は認められなかった。このことが下咽頭収縮筋全体としての巧妙な筋活動様式を演出しているものと考えられる。