抄録
頸椎後方固定術を既往とし、中咽頭側壁癌・下歯肉癌の手術療法後に嚥下障害を生じた 81歳、男性例を報告する。頸部筋緊張調整など間接訓練を施行して顎引きが可能となり嚥下障害の改善が短期で得られた。顎引きはChin DownやChin Tuckとして知られているが、解剖学的には明確な定義はなく、頸椎は多数の反射に連動して動くため、臨床的にはさまざまな肢位が包括されている。われわれはTrigemino-Cervical reflexにおけるChin Tuck肢位 (上位頸椎屈曲・下位頸椎伸展位) を用いて顎引きを指導した。本症例でのChin Tuckは頸椎後方固定術後であるため、上位頸椎屈曲を大きく反映すると考えられ、解剖学的肢位を確認した上で嚥下機能を評価した結果、その重要性が示唆された。現在、各々異なる定義で顎引き効果が検証されており、より正確な評価のためには顎引きを解剖学的な定義の基に指導し、効果を検証することが重要と考える。