日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
C1-inactivator が著効した血管性浮腫の1例
多田 紘恵松山 敏之工藤 毅近松 一朗
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2017 年 120 巻 3 号 p. 217-223

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抄録

 今回, 内因性エストロゲンバランスの変化が発症に関与したと思われる血管性浮腫症例を経験したので報告する.
 症例は32歳, 女性. 排卵誘発剤を内服していた. 頸部腫脹と呼吸困難感を主訴に紹介受診となる. 抗菌薬と副腎皮質ステロイド投与を行うも症状が増悪したため, 遺伝性血管性浮腫 (Hereditary angioedema: HAE) を疑い C1-inactivator を投与したところ速やかに改善を認めた. 本症例では, 血清補体価 C4, 補体第一成分阻害因子 (C1-inhibitor: 以下 C1-INH) 活性の低下を認めず, HAE III型 の可能性とともに排卵誘発剤による内因性エストロゲンバランスの変化を機序として血管性浮腫を来したとも考えられた. 今後, ホルモン療法による外因性エストロゲンや内因性エストロゲンバランスが関与する血管性浮腫症例が増加すると思われる.

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