日本耳鼻咽喉科学会会報
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鼻粘膜肥満細胞の分化・増殖に関する免疫組織学的検討
吉田 尚史石田 春彦天津 睦郎
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2001 年 104 巻 5 号 p. 504-509_1

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抄録

肥満細胞はアレルギー反応において中心的役割を担っており, その分化・増殖は末梢組織で行われることが知られている. われわれはヒトの鼻粘膜を用いて, 末梢組織における肥満細胞の分化・増殖について免疫組織学的検討を行った. 対象は鼻アレルギー患者13名および非鼻アレルギー患者5名であり, 各々から下鼻甲介粘膜を採取し, 薄切切片を作製した. 抗トリプターゼ抗体, 抗c-kit抗体, 抗PCNA抗体および抗キマーゼ抗体を用いて免疫染色を行い, 鼻アレルギーと非鼻アレルギー, 上皮層, 粘膜固有層浅層および深層における抗体陽性細胞数の比較検討を行った. トリプターゼ陽性細胞は鼻アレルギー群と非鼻アレルギー群との比較では, 鼻アレルギー群に多く有意差を認めた. 鼻アレルギー群において, トリプターゼ陽性細胞, c-kit陽性細胞およびPCNA陽性細胞は粘膜固有層深層と比較して上皮層および固有層浅層で多く認めた. さらにトリプターおよびPCNA陽性細胞では上皮層と固有層深層および固有層浅層と深層の間に有意差を認め, c-kit陽性細胞では固有層浅層と深層の間に有意差を認めた. トリプターゼ陽性c-kit陽性細胞すなわちc-kit陽性肥満細胞およびトリプターゼ陽性PCNA陽性細胞すなわちPCNA陽性肥満細胞もまた上皮層および粘膜固有層浅層で多く認めた. 肥満細胞の分化・増殖にはstem cell factorとc-kit receptorが最も重要な役割を果たしていることが知られており, またPCNA陽性細胞は活発な増殖能を有する細胞であることを示している. 従って, われわれの結果から肥満細胞は上皮層および粘膜固有層浅層でより活発に分化・増殖を行っていると考えられた.

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