日本耳鼻咽喉科学会会報
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104 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 朝隈 真一郎, 志多 享
    2001 年 104 巻 5 号 p. 489-494
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    最近10年間に本邦で報告された, 突発性難聴の治療成績について記述された論文をもとに, その治療成績の変遷を調べた. 検討した論文の症例数の合計は3430例で, 治療成績は, 治癒30.8%, 著明回復24.7%, 回復23.3%, 不変21.8%であった. 年度別にみた治療成績では10年間でほとんど変化はなかった. 各論文で報告された治癒率と検討された症例数の関係を調べた. その結果, 症例数の少ない論文で報告された治癒率はそのばらつきが大きく, 症例数が多くなるほどそのばらつきは小さくなり30%付近に集まる傾向が見られた. 信頼できる治療成績を得るためには200以上の症例での検討が必要と思われた. 様々な治療法が検討され, どれも突出して有効な治療成績を挙げることができないことを考えると, 突発性難聴全体に有効な治療法はないのではないかと思われる. 今までのように, 突発性難聴を一纏めにして治療効果を判定しようとしても有効な治療法を見付けることは難しいのではないかと考えられる. 少数にでも良いから, 確実に有効であると判断される治療法を探すことも試みられて良いのではないか.
  • 長谷川 信吾, 木西 實, 毛利 光宏, 天津 睦郎
    2001 年 104 巻 5 号 p. 495-503
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    喉頭発声における声門摩擦音「ハ, ヘ, ホ」 (以下, [h] ) は声門で構音される無声子音である. 喉頭摘出後の気管食道瘻を用いた発声 (以下, 気食瘻発声) においては新声門摩擦音 [h] は日本語で最も生成が困難であるが, 一部の例では実際に [h] が生成されることを経験する. 本研究の目的は気食瘻発声での新声門摩擦音の生成機構を解明することにある.
    気食瘻発声者88名のうち [h] 生成が可能な8名を対象とし, [h] 生成が不可能な80名の中, 4名を選択し対照とした.
    検査語/ha: ha: /, /sa: sa: /発話中の新声門動態を内視鏡を用いて観察し, 新声門開放時間を測定した. 次に検査語発話時の空気力学的検査として呼気流率, 新声門上・下圧, 音声波形を同時測定し, また, 母音/a: /生成時の新声門抵抗を算出した. 筋電図検査として新声門形成に重要な役割を果たす甲状咽頭筋の筋放電ならびにその積分曲線を新声門上・下圧, 音声波形とともに同時記録した.
    [h] 生成時に新声門開放時間は語頭で平均0.26秒, 語中で平均0.19秒であり, [s] 生成時のそれと有意差はなかった. [h] 生成時に呼気流率と新声門上圧の一過性増加がみられ, 一方, 甲状咽頭筋筋放電と新声門下圧の一過性低下を認めた. [s] 生成時にも呼気流率と新声門上圧の一過性増加や甲状咽頭筋筋放電の一過性低下がみられたが, 新声門下圧の低下は認めなかった. また, [h] 生成時の筋放電の一過性低下は [s] 生成時のそれより著明であった. 母音/a: /生成時の新声門抵抗は [h] 生成可能群では不能群と比較して有意に低値であった.
    気食瘻発声では新声門摩擦音 [h] 生成が (1) 他の無声音に比較してさらに甲状咽頭筋を弛緩させる新声門調節と (2) 新声門下圧の一過性低下すなわち呼気調節との協調により遂行されていることが判明した.
  • 吉田 尚史, 石田 春彦, 天津 睦郎
    2001 年 104 巻 5 号 p. 504-509_1
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    肥満細胞はアレルギー反応において中心的役割を担っており, その分化・増殖は末梢組織で行われることが知られている. われわれはヒトの鼻粘膜を用いて, 末梢組織における肥満細胞の分化・増殖について免疫組織学的検討を行った. 対象は鼻アレルギー患者13名および非鼻アレルギー患者5名であり, 各々から下鼻甲介粘膜を採取し, 薄切切片を作製した. 抗トリプターゼ抗体, 抗c-kit抗体, 抗PCNA抗体および抗キマーゼ抗体を用いて免疫染色を行い, 鼻アレルギーと非鼻アレルギー, 上皮層, 粘膜固有層浅層および深層における抗体陽性細胞数の比較検討を行った. トリプターゼ陽性細胞は鼻アレルギー群と非鼻アレルギー群との比較では, 鼻アレルギー群に多く有意差を認めた. 鼻アレルギー群において, トリプターゼ陽性細胞, c-kit陽性細胞およびPCNA陽性細胞は粘膜固有層深層と比較して上皮層および固有層浅層で多く認めた. さらにトリプターおよびPCNA陽性細胞では上皮層と固有層深層および固有層浅層と深層の間に有意差を認め, c-kit陽性細胞では固有層浅層と深層の間に有意差を認めた. トリプターゼ陽性c-kit陽性細胞すなわちc-kit陽性肥満細胞およびトリプターゼ陽性PCNA陽性細胞すなわちPCNA陽性肥満細胞もまた上皮層および粘膜固有層浅層で多く認めた. 肥満細胞の分化・増殖にはstem cell factorとc-kit receptorが最も重要な役割を果たしていることが知られており, またPCNA陽性細胞は活発な増殖能を有する細胞であることを示している. 従って, われわれの結果から肥満細胞は上皮層および粘膜固有層浅層でより活発に分化・増殖を行っていると考えられた.
  • 熊川 孝三, 望月 義也, 高橋 直一, 武田 英彦, 武藤 奈緒子, 山根 雅昭, 関 要次郎, 竹森 節子, 小松崎 篤
    2001 年 104 巻 5 号 p. 510-513
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    聴神経由来の高度感音難聴の外科的治療法として, 脳幹の蝸牛神経核を直接に電気刺激して聴覚を取り戻す聴性脳幹インプラント (Auditory Brainstem Implant, 以下ABI) が開発され, すでに海外では試験治療が行われている.
    われわれは25歳男性の神経線維腫症第2型の患者に対して腫瘍切除後に, 本邦で第1例目の8チャンネルABI埋め込み手術を行う機会をえた. 5チャンネルで音の知覚が可能であり, 読話を併用した場合, 簡単な日常会話は筆談を用いなくとも了解可能となっている. 術後1年3ヵ月間を経過したが, 現在のところ特に電極の感染や露出, 異物反応などの副作用は認められておらず, 安定した状態にある. 以上の経験から, ABIは両側の聴神経障害を有する患者の聴覚改善のための人工臓器の一つとして, 今後, 試みられてよい方法であると結論した.
  • 大迫 廣人, 春田 厚, 坪井 陽子, 松浦 宏司, 小宗 静男
    2001 年 104 巻 5 号 p. 514-517
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳かきによる機械的刺激が外耳道湿疹の原因となり, その繰り返す慢性炎症が癌誘発の一因と考えられた外耳道癌症例を経験した. 外耳道肉芽腫を伴う外耳道湿疹が軽快せず平成9年7月生検を行った結果, 左外耳道癌と診断された. 外科的治療および化学療法, 放射線治療を行うも効を奏せず腫瘍が拡大進展し, 約8ヵ月後には対側の右外耳道に癌が発症した. 最終的に不幸な転帰をとったが, 両耳の病巣についてDNA遺伝子解析を行いその結果P53遺伝子の異常により両外耳道癌は転移性癌ではなく全く独立した重複癌ということが判明した.
  • 高齢難聴者の補聴器利用
    細井 裕司
    2001 年 104 巻 5 号 p. 518-521
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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