日本耳鼻咽喉科学会会報
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嗅刺激による瞳孔反射-客観的嗅覚検査法としての実用化について
西田 裕明隈上 秀伯陣内 広
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1973 年 76 巻 12 号 p. 1449-1458

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抄録

電子走査型瞳孔計を用い,基準奥5種類についての瞳孔反射を検査記録し嗅刺激による瞳孔反射の客観的嗅覚検査法としての実用性について検討した.
方法:嗅覚障害を自覚していない健康成人32例について5種類の基準臭を用いて嗅覚測定基準設定に関する研究会で決められた方法であらかじめ検知閾値を検査しておき,ついで検者が嗅系を浸した"におい紙"を被検者の外鼻孔に近づげ3~4秒においをかがせその時の瞳孔反射を記録した.
結果:
1. 嗅覚正常者では基準臭5種類とも瞳孔反応発現率は約88%と非常に高く,大部分が瞳孔反射検査中に嗅覚を感知した最小可嗅値に一致して瞳孔も鋭敏に反応を示した.
2. 嗅刺激による瞳孔反射の反応型には散瞳型,縮瞳後散瞳型,瞳孔動揺型の三つのパターンがみられ,いづれの嗅素においても散瞳型を呈したものが最も多く他は少数例づつであつた.
3. 自覚閾値に一致して瞳孔反射が認められた症例の一例にdl-Camphorおよびγ-Undecalactoneを用いて短時間の刺激間隔で順次濃度を高めて刺激を与えたときの瞳孔反射はいづれも自覚閾値に一致したところですでに最も大きな反応がみられ,それよりも高い濃度ではおそらく疲労現象のためにわずかな反応か,もしくはほとんど反応がみとめられなかった.
4. 嗅覚脱失者の一例について瞳孔反射を検査したがいづれの嗅素とも最も高い濃度で刺激しても瞳孔反射は全くあらわれなかつた.

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