抄録
我々の研究施設に発生した内耳奇形ハムスターを電気生理的(ABR,AP,CM,SP)に検討した.
1. 内耳奇形ハムスターは,形態的に外有毛細胞第1列の聴毛における個々の配列は正常であるが,細胞間の調和がなく色々の方向に向いている.左右差なく,全回転に及んでいて全体の70~85%の聴毛が変化を示すものであった.
2. ABR,SPでは正常と差は認められず内耳奇形ハムスターは,正常の聴力を示すものと思われた.
3. CM出力は50~85dBSPLの間で有意に内耳奇形ハムスターが低下を示し,APの振幅は50~80dBSPLの間で有意に低下を示していた.
4. このことより,哺乳類の蝸牛感覚細胞にも極性があること,実際に計測されるCM出力は,外有毛細胞3列がそれぞれ反応し,その総和を記録していることを証明した.