1995 年 98 巻 5 号 p. 781-788,925
鳩類の耳石器には, 卵形嚢, 球形嚢と耳石壼嚢が存在するが, 耳石壼嚢については, その微細構造についてはいまだ不明点が多い. そこで著者は, これらの点を明確化するため, 本研究を計画した. その結果, 各平衡壼の立体位置関係は, 耳石壼嚢は卵形嚢に対し平均31° (n=3), 球形嚢に対し平均45° (n=3) であった. 耳石壼嚢の分水嶺はC字型を呈し, 動毛の極在は分水嶺を中心に相互に外側に向かう球形嚢のそれと同一の極在を示した. 耳石壼嚢の耳石膜は, 他の平衡斑同様にメッシュ状を示しその耳石層は分水嶺上で特に薄くなっていることが確認された. 耳石壺嚢の表面積は平均0.98mm2 (n=3) で感覚細胞数は16.800個 (n=3) であった.