1995 年 98 巻 5 号 p. 789-794,925
錐体部真珠腫は現在においても治療の困難な疾患の一つである. 当科で治療を行った14症例の経験から本症の手術治療上の問題点について検討を行った.
耳漏を伴う場合は感染を根絶してから頭蓋底の真珠腫を除去すべきで, 手術を段階的に行うことで対処した. 5例では真珠腫の完全摘出が困難なため削開腔は開放のままとしたが, 9例では創腔を脂肪ないし筋肉弁で充填した. 顔面神経麻痺の治療は減荷術が主であったが, 予後は必ずしも良好でなく, 吊り上げ術などの形成手術の併用を要する症例が多かった. 本症例ではCTやMRIを用いた術後の経過観察が重要で, 3例が再発し再手術を要した.