他国の映像メディア産業同様、わが国も2010年前後に放送産業の垂直分離が政策として意図された。産業の垂直分離(市場化)にも垂直統合(組織化)にもそれぞれ合理性がある。考慮すべきことは究極の差別化された財である映像の成果リスクを垂直ステイクホルダーの間でどのようにシェアしたり担保するかである。そのリスク・シェアのために、分離されている場合は垂直的取引に様々なオプションを付ける商慣習がある。
垂直分離され水平的に融合した各レイヤーの競争促進は、容易なレイヤーもあれば困難なものもある。各レイヤー内の競争状態は、垂直的取引における民間契約の交渉力を背後から規定し、レイヤー間の接続契約に影響をあたえ、結果として社会的最適にも影響する。分離されたレイヤー間、セクター間の接続に関する政策的な議論は公益事業各分野で多く、映像分野においてもレイヤーの区切り方と接続問題は同時に考慮する必要がある。長期的には、市場競争自体が自律的にレイヤーを形成するダイナミズムが尊重されるべきで、政策がダイナミズムの基礎を形成することを意識していることは価値がある。