情報通信政策研究
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寄稿論文
AI原則は機能するか?
非拘束的原則から普遍的原則への道筋
新保 史生
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2020 年 3 巻 2 号 p. 53-70

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抄録

「AI原則ブーム」が到来するとの予想のもとで、AI原則を単なる非拘束的な原則として活用を求める段階から、AIの実用・実装に対応した法規範においてその活用を考えるべきではないかとの提案を試みることが本稿の目的である。

第三次AIブームの興隆によって、社会の様々な場面でAIの研究開発からその活用が現実化するとともに、その適正な利用にあたって原則の重要性が認識されるようになりつつある。そのため、エマージング・テクノロジー(新興技術)の活用を見据えて必要な対応を推進するための取り組みとして、基本法的なものを整備することで非拘束的な「原則」と謳ってきたものを基本原則として定めたり、法定公表事項として当該原則を組み込んだルール作りを考えることはできないだろうか。

新たな問題に対応するためのルール作りは、EUにおける取り組みが様々な局面で先行しているが、「AI規制」に向けた検討においても同じ図式が繰り返されようとしている。本稿では、国内外における原則・ガイドライン等策定の現況を概観するとともに、EUにおける検討動向について、「信頼できるAIのための倫理ガイドライン」の内容と「評価リスト」、AI規制の方向性を示すホワイト・ペーパーの内容を概観することで、今後の規制に向けた方向性を把握する。EUにおける検討状況を参考にすることは、我が国における取り組みを考えるにあたり示唆に富むものである。

最後に、OECDが「人口知能に関する理事会勧告」を採択した意義とともに、法的拘束力を有さない原則が法整備において参照されているOECDプライバシー・ガイドラインの位置づけを再確認することで、非拘束的なガイドラインではあるものの、OECDプライバシー8原則が各国の法制度において参照されるに至っている点に着目し、非拘束的原則が普遍的原則として用いられてきた意義を考える。

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