2022 年 5 巻 2 号 p. 1-27
ドイツでは、従来からストリーミング・コンテンツが認可を要する「放送」に含まれるのか否かにつき議論がなされてきたが、最近になって、「放送」の概念、とりわけ民間事業者によるストリーミング・コンテンツに対する法規制をめぐって大きな動きが見られた。
ひとつは、放送認可につき管轄権を有する監督機関であるZAKが、複数の事例で、インターネット上のライブストリーミング・コンテンツを「放送」とみなし、それゆえ認可が必要であると判断したことである。さらに、ベルリン行政裁判所も、2019年9月26日の判決において、Axel Springer社が提供していたライブストリーミング・コンテンツにつき、ZAKの判断と同様に、当該コンテンツを認可を要する「放送」にあたると判断している。
もうひとつは、こうした動きのなかで、2020年11月7日に、従来の放送州際協定に代わって新たに「メディア州際協定」が発効されたことである。同法は、例外的に「放送」とはみなされないコンテンツの基準を大幅に緩和し、それに伴い、認可なしに配信可能なストリーミング・コンテンツの範囲が拡大したのである。
このような背景から、ドイツでは現在、ストリーミング・コンテンツが「放送」に含まれるのか否かの議論が、判例・学説において改めて議論されているところである。そこで本稿は、こうしたドイツの議論を分析するために、とりわけ上述の2019年9月26日のベルリン行政裁判所判決を取り上げ、ドイツにおけるストリーム・コンテンツに対する法規制の内容と運用について検討を加えることにする。