情報通信政策研究
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寄稿論文
領域特定規制を担う行政組織について
ドイツ連邦ネットワーク庁を手がかりに
巽 智彦
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2022 年 6 巻 1 号 p. 133-149

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抄録

いわゆる公益事業については、参入・退出規制、料金規制、ユニバーサル・サービスの義務付けなど、特徴ある一連の行政規制(領域特定規制)がなされている。他方で、領域特定規制を担う行政組織のあり方も重要な問題である。いずれの点についても特徴的なのがドイツの法制であり、彼の国では「規整法」という学問領域が成立している。とくに領域特定規制の執行を担う行政機関については、ドイツの法制度は特徴的である。すなわち、連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur)が、電力、ガス、電気通信、郵便および鉄道に関する行政規制の法を一元的に執行しており、かつ同庁は、連邦政府から一定の独立性を確保された官庁である(1)。

同庁には現在10の局と11の審判部が置かれ、重要な案件では合議体による審判がなされる(2)。同庁は「独立性」を有する機関である点に特徴を有するが、そこでいう「独立性」は多義的であり、①所有と規制の分離、②事業者からの距離の確保、③政治的影響力の排除、④競争官庁からの分離に腑分けすることができる(3)。こうしたドイツの連邦ネットワーク庁の制度設計やそれをめぐる議論から得られる示唆を確認することが、本稿の目的である(4)。

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