情報通信政策研究
Online ISSN : 2432-9177
Print ISSN : 2433-6254
ISSN-L : 2432-9177
寄稿論文
領域特定規制を担う行政組織について
ドイツ連邦ネットワーク庁を手がかりに
巽 智彦
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2022 年 6 巻 1 号 p. 133-149

詳細
要旨

いわゆる公益事業については、参入・退出規制、料金規制、ユニバーサル・サービスの義務付けなど、特徴ある一連の行政規制(領域特定規制)がなされている。他方で、領域特定規制を担う行政組織のあり方も重要な問題である。いずれの点についても特徴的なのがドイツの法制であり、彼の国では「規整法」という学問領域が成立している。とくに領域特定規制の執行を担う行政機関については、ドイツの法制度は特徴的である。すなわち、連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur)が、電力、ガス、電気通信、郵便および鉄道に関する行政規制の法を一元的に執行しており、かつ同庁は、連邦政府から一定の独立性を確保された官庁である(1)。

同庁には現在10の局と11の審判部が置かれ、重要な案件では合議体による審判がなされる(2)。同庁は「独立性」を有する機関である点に特徴を有するが、そこでいう「独立性」は多義的であり、①所有と規制の分離、②事業者からの距離の確保、③政治的影響力の排除、④競争官庁からの分離に腑分けすることができる(3)。こうしたドイツの連邦ネットワーク庁の制度設計やそれをめぐる議論から得られる示唆を確認することが、本稿の目的である(4)。

Translated Abstract

For so-called public utilities, a series of distinctive administrative regulations (sector specific regulations) are in place, including entry and exit regulations, rate regulations, universal service and so forth. The administrative organization responsible for such regulations is also an important issue. The German legal system is unique in both points, and a discipline called "Regulierungsrecht" has been established. In particular, the German legal system is distinctive with regard to the administrative bodies responsible for the enforcement of sector specific regulations. The Federal Network Agency (Bundesnetzagentur) is the enforcer of administrative and regulatory law for electricity, gas, telecommunications, postal services, and railroads, and it is an agency with a certain degree of independence from the federal government (1).

The Agency currently has 10 bureaus and 11 “Ruling Chambers”, and important cases are adjudicated by this chamber as a collegial body (2). The agency is characterized by its "independence," which is multifaceted and can be divided into (a) separation of ownership and regulation, (b) distance from business operators, (c) exclusion of political influence, and (d) separation from the competition authorities (3). The purpose of this paper is to confirm the implications on Japanese law that can be drawn from the institutional design of the German Federal Network Agency and the discussions surrounding it (4).

1.ドイツにおける公益事業規制

1.1.規整法(Regulierungsrecht)

いわゆる公益事業2については、参入・退出規制、料金規制、ユニバーサル・サービスの義務付けなど、特徴ある一連の行政規制がなされている3。こうした公益事業の行政規制のあり方については、とりわけ競争法との関係づけをめぐって、多くの議論が展開されてきた4。この点に関する比較法分析は、公益事業の行政規制に関する法と競争法とを分離して把握し、前者の規律範囲において後者の適用を除外する傾向を示す「分離モデル-アメリカ型」と、両者を統合して把握し、前者と後者を重畳的ないし競合的に作用させる傾向を示す「統合モデル-EU型」を析出している5。とはいえ、論者も注意を促しているとおり6、事業規制法と競争法の分離・統合の具体的なあり方は、事業の特色に応じて多様であるし、またそれを分析する視点も、各国ないし各法域の法理論の特色に応じてさまざまである7

たとえば、筆者が主たる比較法対象国として参照しているドイツ8においては、公益事業規制を分析するための理論枠組みとして、経済行政法から派生した規整法(Regulierungsrecht)が構築されており、公法学の議論枠組みに定位された体系性の高い議論がなされている。規整法とは、その定義ないし範囲について未だ意見の一致を見ないものの、大まかに言えば、電気通信、郵便、電力・ガス、鉄道を典型とするネットワーク産業分野を中心に、当該産業の市場において事業者間の競争を創出し、かつサービスの十分な質および量を確保すべくなされる、事前および事後の行政規制を取り扱う法分野である9。規整法は、一般競争法の目指す市場の維持ではなく、市場の「形成」(Gestaltung)を目指すものとされており10、一般競争法とは別に、ないしはそれに追加して設けられている、非対称規制ないし領域特定規制(Sektorspezifische Regulierung/ sector specific regulation)に焦点を当てるものである11

1.2.規整を担う行政機関

他方で、日本のこれまでの公益事業法制の研究においては、領域特定規制を担う行政組織の構造に焦点が当てられることがあり12、外国法の研究も散見されるところである13。こうした規制の執行を担う行政機関に着目しても、ドイツの法制度は特筆に値する14

一方で、日本においては、電気通信事業法、郵便法は総務省、電気事業法、ガス事業法は経済産業省、鉄道事業法は国土交通省と、公益事業ないしネットワーク産業の規制に関する法令の所管が複数の官庁に分散しており、その執行もそれぞれの官庁が行っている。これに対してドイツでは、連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur für Elektrizität, Gas, Telekommunikation, Post und Eisenbahnen)が、その名称の通り、電力、ガス、電気通信、郵便および鉄道に関する行政規制の法を一元的に執行している15。すなわち、日本では複数の官庁がそれぞれ行っている法の執行を、ドイツでは一つの官庁が一元的に担っているのである。

他方で、日本においては、公益事業規制を担う官庁は各省の大臣であり、上記の法令を具体的に所管する組織は各省の大臣の指揮監督の下に置かれる内部部局である。これに対して、ドイツの連邦ネットワーク庁は、連邦経済・気候保護省(Bundesministerium für Wirtschaft und Klimaschutz)16の下に置かれているものの、連邦経済・気候保護大臣(Bundesminister für Wirtschaft und Klimaschutz)から一定の独立性を確保された官庁である17。すなわち、日本と異なり、ドイツでは連邦政府から独立した官庁により、公益事業規制が執行されているのである。

2.連邦ネットワーク庁の組織

連邦ネットワーク庁は、連邦経済・気候保護省の下に置かれる独立連邦上級官庁(selbstständige Bundesoberbehörde)であり(§1 S.2 BNetzAG18)、①電力分野における再生可能エネルギーの法を含む、電気、ガスおよび水19の導管を通じた供給に関する法、②電気通信法、③郵便法および④連邦鉄道交通行政法の基準に準じた鉄道インフラストラクチャーへのアクセスに関する法を所管する(§2 Abs.1 BNetzAG)。

2.1.概要

現在の連邦ネットワーク庁には、1名の長官(Präsident(in))および2名の副長官(Visepräsident(in))の下に10の局(Abteilung)20が置かれ、これらから独立して11の審判部(Beschlusskammer)21が置かれている22。連邦ネットワーク庁自体は独任制の長官を長とする官庁であり、局はその内部部局として位置付けられるが、一定の重要な決定は審判部で行うこととされており23、合議体における意思決定をも可能とする組織である。また、連邦ネットワーク庁には評議会(Beirat)24が置かれており、長官および副長官の連邦政府への推薦の権限を有する(§ 3 Abs. 3 BNetzAG)ほか、一定の重要案件について意見を述べる等の権限を有している25

連邦ネットワーク庁の組織構造について法律で定められているのは、1名の長官および2名の副長官を置くこと(§ 3 Abs. 1 S. 1 BNetzAG)、長官および副長官は評議会の推薦に基づき連邦政府が指名し、連邦大統領が任命すること(§ 3 Abs. 1 S. 3 und S. 6 BNetzAG)、評議会は連邦議会議員16 名と連邦参議院議員16 名から構成され、構成員は連邦議会と連邦参議院の提案に基づき連邦政府が任命することである(§ 5 Abs.1 BNetzAG)。これに対して、局や審判部の組織構造は、長官が制定する規則(Geschäftsordnung)で定めることとされており、当該規則の制定には連邦経済・エネルギー省(現在の連邦経済・気候変動省)および連邦交通・デジタルインフラ省(Bundesministerium für Verkehr und digitale Infrastruktur)(現在の連邦デジタル・交通省(Bundesministerium für Digitales und Verkehr))の確認(Bestätigung)が必要とされている(§ 3 Abs. 1 S. 2 BNetzAG)。

2.2.局

2022年7月現在、各局の所掌は以下のとおりとされている26

  • ・Z局(Abteilung Z - Zentralabteilung)
  •  ・Z1課(Unterabteilung Z1):組織・人事等
  •  ・Z2課(Unterabteilung Z2):財務・個人情報保護等
  • ・IS局(Abteilung IS – Informationstechnik und -sicherheit, Interne IT-Sicherheit)
  •  ・情報技術、サイバーセキュリティ等
  • ・第1局(Abteilung 1)
  •  ・電気通信規整の経済問題(Ökonomische Fragen der Regulierung Telekommunikation)
  • ・第2局(Abteilung 2)
  •  ・電気通信規整の法問題、電波規制(Rechtsfragen der Regulierung Telekommunikation, Frequenzordnung)
  • ・第3局(Abteilung 3)
  •  ・郵便市場規整の国際的・基本的問題(Internationales, Grundsatzfragen der Regulierung der Postmärkte)
  • ・第4局(Abteilung 4)
  •  ・技術規整、電気通信標準化(Technische Regulierung, Standardisierung Telekommunikation)
  • ・第5局(Abteilung 5)
  •  ・消費者保護、支所(Verbraucherschutz und Außenstellen)
  • ・第6局(Abteilung 6)
  •  ・エネルギー規整(Energieregulierung)
  • ・第7局(Abteilung 7)
  •  ・鉄道規整(Eisenbahnregulierung)
  • ・第8局(Abteilung 8)
  •  ・ネットワークインフラ構築(Netzausbau)

2.3.審判部

2022年7月現在、各審判部の所掌は以下のとおりとされている27

  • ・第1審判部(長官部)(Beschlusskammer 1: Präsidentenkammer)
  •  ・電気通信・郵便分野のユニバーサル・サービス、電波の希少性に関する問題(Universaldienst im Bereich Telekommunikation und Post, Frequenzknappheit)
  • ・第2審判部(Beschlusskammer 2)
  •  ・電気通信市場(最終顧客市場)の規整(Regulierung Telekommunikations- Endkundenmärkte)など
  • ・第3審判部(Beschlusskammer 3)
  •  ・電気通信市場(卸売市場)28の規整(Regulierung Telekommunikations-Vorleistungsmärkte)
  • ・第4審判部(Beschlusskammer 4)
  •  ・再生可能エネルギー法(Gesetz für den Ausbau erneuerbarer Energien, EEG)上の分担金(EEG-Umlage)など
  • ・第5審判部(Beschlusskammer 5)
  •  ・郵便市場の料金規整および特別濫用監視29(Entgeltregulierung und besondere Missbrauchsaufsicht bei Postdienstleistungen)
  • ・第6審判部(Beschlusskammer 6)
  •  ・電力供給ネットワークへのアクセス規整(Regulierung Elektrizitätsnetze)
  • ・第7審判部(Beschlusskammer 7)
  •  ・ガス・水供給ネットワークへのアクセス規整(Regulierung Gasnetze,Wasserstoffnetze)
  • ・第8審判部(Beschlusskammer 8)
  •  ・電力供給ネットワーク利用料金規整(Netzentgelte der Elektrizität)
  • ・第9審判部(Beschlusskammer 9)
  •  ・ガス・水供給ネットワーク利用料金規整(Netzentgelte Gas und Wasserstoff)
  • ・第10審判部(Beschlusskammer 10)
  •  ・鉄道規整(Eisenbahnen)
  • ・第11審判部(Beschlusskammer 11)
  •  ・デジネット法(DigiNetz-Gesetz30)上の国内紛争処理機関(Nationale Streitbeilegungsstelle)31

3.連邦ネットワーク庁の「独立性」

公益事業の規制を担う行政機関についてしばしば語られるのは、その「独立性」である32。とりわけ、電気通信の分野においては、EU指令が複数の条を起こして加盟国の規制官庁の「独立性(Unabhängigkeit)」の確保を求めている。すなわち、2018年ヨーロッパ電気通信法典指令(以下「法典指令」と呼ぶ)33は、第5条を「国内規整官庁その他の権限ある官庁(Nationale Regulierungsbehörden und andere zuständige Behörden)」として、当該指令において加盟国に課せられたすべての任務を権限ある官庁に担わせることを加盟国に求めたうえで(同1項1文)34、第6条を「国内規整官庁その他の権限ある官庁の独立性(Unabhängigkeit)」、第8条を「国内規整官庁の政治的独立性(politische Unabhängigkeit)と説明義務(Rechenschaftspflicht)」とし、加盟国への要請を具体的に示している。

しかしながら、ここで語られる「独立性」は、法的に見ると、非常に多義的である35。以下では、上記の電気通信法典指令の関連条文を拠り所としながら、「独立性」の意味内容を腑分けしてみたい。

3.1.所有と規制の分離

郵便、電気通信や鉄道は、国営ないし公営であった事業が民営化・自由化される過程を辿る際、これまで自らが事業者としての地位を有していた国家その他の公的主体が、もっぱら規制官庁として当該事業に関わることになった(規制機関と事業体の分離36)。しかしながら、国家が自らの事業を民営化した後も、当該民間事業者に対して、いわゆる黄金株のしくみを通じて影響力を及ぼすことができるのであれば、そうした株主としての立場に基づく利害関係が、規制権限の行使を歪めることがあり得る37。これを阻止するべしとの文脈で用いられるのが、所有と規制の分離38、機能的独立性(funktionelle Unabhängigkeit)39といった言葉である。そこにどのような内容の法的規制を含めるのかについては、さほどはっきりした議論が見受けられないが、一方で国家組織における所有の意思決定部門と規制のそれとが独立していること(政府ないし財務所管官庁と規制所管官庁との分離)が、他方で情報交換や人材交流の制限が、これに含まれ得る。ただし、前者は後述する政治的影響力の排除と、後者は事業者からの距離の確保と、それぞれ重なりあう規律である40

とりわけ電気通信分野では、「加盟国が電気通信ネットワークまたは電気通信役務を提供する企業に引き続き関与する場合、またはこれらを統制する場合には、高権的機能を、所有権または統制に関連する活動から、実効的かつ構造的に分離すること(Trennung)を確保しなければならない」(法典指令6条1項2文41)とされている。ここで法典指令は、加盟国が電気通信事業者の経営に株主ないし持分権者として関与すること自体は許容している。実際、ドイツでは、連邦および復興金融公庫(Kreditanstalt für Wiederaufbau: KfW)がドイツテレコムの株式を30.5%保有している(2022年6月30日現在)42。しかしながら、後述の政治的影響力の排除(3.3)が十分であるか否かという論点とも関わって、こうした現状が指令に適合しているか否かが議論されている43

3.2.事業者からの距離の確保

他方で、民営化・自由化の過程を経た事業であるか否かを問わず、公益事業の規制官庁について一般的に指摘されるのは、規制機関と規制対象たる事業者との間に適切な距離が保たれなければならないという要請である。これは経済的独立性(wirtschaftliche Unabhängigkeit)の要請と呼ばれることもある44。行政庁が規整の任務を遂行する際には、一定の規制対象企業との密接な関係を長期間にわたって継続することとなるうえ、規制対象企業の側に専門性や情報における優位性が存在する場合も少なくないため、規制官庁が規制対象企業に対して実効的に権限を行使することが妨げられることがあり得る。端的に言えば、いわゆる「規制の虜」(regulatory capture)の防止の要請である45

法典指令は、この点についても規定を置いている。曰く、「加盟国は、国内規整官庁その他の権限ある官庁が、法的にかつ機能的に、電気通信ネットワーク、電気通信端末または電気通信役務を提供するすべての自然人または法人46から独立するよう配慮することにより、その独立性を保障する」(法典指令6条1項1文)。法律上も、長官および副長官の兼業禁止等の定め(§ 3 BNetzAG)が置かれている。この点に関しては、ドイツではむしろ、EU指令上直接に要求されているものではない要素が強調されている。すなわち、一方で、ドイツの連邦ネットワーク庁は、電気通信のみならず、電力・ガス(エネルギー)、郵便および鉄道に関する法を所管している分野横断的な行政庁(eine sektorenübergreifende Behörde)であるがゆえに、特定分野の対象事業者との関係が密接になりすぎない点で利点を有するとされる47。また、他方で、重要な決定が審判部によって行われることも、特定の構成員が「規制の虜」となっていたとしても、合議体による決定によりその弊を免れることになる点で、やはり事業者からの距離の確保の要請に適うものとされる48

3.3.政治的影響力の排除

公益事業の規制官庁について「独立性」が語られる際に、同様に頻繁に念頭に置かれているのは、政府から独立して規制を行うことが認められなければならないという要請である(政府と規制機関の分離49)。これは政治的独立性(politische Unabhängigkeit)と呼ばれている50

この点は、電気通信分野のEU指令において、徐々に詳細な規定が置かれるに至っている。当初の枠組指令は、3条3項51において、国内規整庁の政治的党派性を排除することを求めるに留まり、またそれを達成する手段の詳細を大幅に加盟国に委ねていた。その後、2009年の改正52により、①国内規整庁が他の機関からの指示を受けないこと(3条3a項第1下部項第1文ないし第3文53)、②国内規整庁の長ないし構成員が、事前に加盟国の法令で定められた権限行使の前提条件を満たさなくなった場合にのみ解任されること(同第4文ないし第6文54)、③国内規整庁が固有の単年度予算を有すること(同第2下部項第1文および第2文)を規定することで、国内規整庁に対する政治的影響力を排除する方策を加盟国に対して具体的に指示するに至った。

法典指令は、①②に関して規律をさらに加えた。すなわち、①´国内規整庁は内部的手続や人事管理の点でも独立していなければならないこと、独立性に加えて客観性が要求されること、EU法に適合して透明で責任ある形で活動すべきこと(法典指令8条1項55)、②´国内規整庁の長ないし構成員は、最低でも3年間の任期を有すること、その功績、専門知識や知見、経験に基づいて専門的に定評があり、熟練した人物の集団から、公開され透明な手続によって選任されること(法典指令7条1項1文)、国内規整庁の判断過程の継続性を保障すること(同2文)が明記された。

このうち①については、指令との適合性について議論がある。すなわち、①連邦ネットワーク庁は、連邦経済・気候保護省56の所轄に属する独立上級連邦官庁(selbständige Bundesoberbehörde)であると位置付けられている(§ 1 S. 2 BNetzAG)ものの、連邦経済・気候保護省または連邦デジタル・交通省57が同庁を指揮監督することが予定されているように読める条文があり58、その意味するところについては争いがある59。行政機関に対する大臣の指揮監督権は、行政の正統性(Legitimation)という憲法上の要請を満たすための重要な手段の一つであり、連邦ネットワーク庁の(政治的)独立性と正統性の相剋は、ドイツの公法学における重要なテーマであり続けている60

3.4.競争官庁からの分離

ところで、すでに事業者からの距離が確保され、政治的影響力も排除された競争官庁が存在している場合、その権限を公益事業の規制に延伸することでも、目的は果たされるように見える61。しかし、ドイツの公益事業規制においては、公益事業の規制官庁が一般競争法の所管官庁とは別に置かれることが通例である。規整法という学問領域が体系化されたことにも表れている通り、ドイツではこうした規整官庁の競争官庁からの分離が意識的に維持され、そこに積極的な意義が見出されてきた62。この点は、規整官庁の自立ないし独立(Verselbständigung)として言及されることがある63

法典指令も、国内規整官庁とは別に、競争法や消費者保護法の適用を任務とする国内官庁が存在することを念頭に、両者の間での相互の助言や協働(5条3項2文64)、情報交換(11条65)を求めている。ドイツでは、連邦ネットワーク庁と同じく連邦経済・気候保護省の下に置かれる独立連邦上級官庁(selbständige Bundesoberbehörde)である連邦カルテル庁(Bundeskartellamt)が一般競争法を所管しており、連邦ネットワーク庁が決定を下すに当たって連邦カルテル庁の合意を得ること(§ 197 Abs. 1 TKG)や、適時に連邦カルテル庁の意見を徴することが求められる(§ 197 Abs. 2 und 3 TKG)。逆に、連邦カルテル庁に対しても、適時に連邦ネットワーク庁の意見を徴することが求められる(§ 197 Abs. 4 TKG)。

4.まとめに代えて

以上、非常に雑駁にではあるが、ドイツ連邦ネットワーク庁の組織(2)と、その「独立性」をめぐる議論の概要(3)を紹介した。以下では本稿のまとめに代えて、日本の公益事業規制に対する示唆を検討する。

4.1.横断的な所掌事務の意義

日本でも、情報通信審議会、情報通信行政・郵政行政審議会や、電力・ガス取引監視等委員会のように、通信・郵便やエネルギーといった単位では、産業分野横断的な事務を所掌する機関が置かれることがある。他方で、連邦ネットワーク庁のように、通信・郵便とエネルギーとを横断して、またさらに鉄道や水の供給をも含めて事務を所掌する機関は存在せず、その意味で連邦ネットワーク庁の所掌事務の広範さはやはり注目に値する。

ただし、連邦ネットワーク庁の実際の組織構造を見ると、局や審判部の所掌は明確に分かれている(2)。各局、各審判部の間でどれだけの連絡調整が図られているのか、長官の統合調整機能がどれだけ発揮されているのかを具に見なければ、その横断的な所掌事務の実際の意義を把握することはできないであろう。

また、「規整法」の対象に含められる産業分野は、その定義の仕方にもよるが、連邦ネットワーク庁の所管する通信、郵便、エネルギー、鉄道に限らず、たとえば近距離交通、メディア、ごみ処理、金融等の多岐にわたっている66。水の供給が比較的最近になって所掌に加えられた67ことからもわかるように、同庁の所管のあり方には彼の国の来し方に起因する部分も大きいものと推察される。そうした背景を解明することなしには、現在の同庁の在り方を正当に評価することはできない。

4.2.独立「規制」官庁の機能

さらに、同庁が果たす機能についても注意が必要である。同庁が独立規制官庁として紹介される際に着目されているのは、主として、政策の企画立案と区別された、政策の実施機能であると推察される68。しかしながら、連邦ネットワーク庁は、省が企画立案した政策の実施に力点を置きながらも、分野によっては大きな政策立案機能を果たしている69。日本でも、当初は主として政策の実施機能を担うものとされた特定個人情報保護委員会が、個人情報保護委員会に改組され、「個人情報の保護に関する基本方針」の案の作成を担うようになってからは(個人情報保護法7条1項参照)、政策立案機能に大きな期待がかけられるようになっている70

電気通信の分野でも、本省から独立した規制機関ないし政策実施機関を設置すべきとする論に対し、本省における政策立案機能と政策実施機能の統合的な推進の必要性を強調する論が常に対置させられてきた71が、上記の諸例が示すのは、政策立案機能と政策実施機能とを、本省ではなく、むしろ外局において統合的に推進する方向性である。もちろん、このような方向性を公法学の観点からいかに評価するか自体が問題であるが、いずれにせよ、政策の立案の局面と実施の局面とのいずれに焦点を当てるかによって、連邦ネットワーク庁の横断的所掌のもつ意味も変わってくるであろう。

4.3.「独立性」の意義

日本において独立規制機関に期待がかけられる際、具体的な制度としてよく念頭に置かれているのは、外局としての委員会(いわゆる「3条委員会」)である。日本では、公益事業規制に関わる専門組織はいずれも審議会(いわゆる「8条委員会」)であり、外局としての委員会が置かれる例は、現在のところ存在しない。

連邦ネットワーク庁の「独立性」をめぐる議論から立ち現れるのは、規制の実効性を確保するために必要な「独立性」には複数の含意があり、それを達成するために必要な法的な規律はそれぞれ異なる、という視点である。規制の実効性を確保するためにいかなる意味で「独立」した機関が必要なのか、仮に外局としての委員会を設置することにしたとして、そのことによって直接達成される「独立性」はどのようなものなのか、それのみでは達成されない「独立性」を確保するのにどのような方策が必要なのか、意識的に論じることが必要であろう。とはいえ、独立行政委員会の合憲性に関する議論の蓄積の中に、こうした問題群に取り組む手がかりは豊富に含まれているものと見受けられる72

他方で、連邦ネットワーク庁の「独立性」をめぐる議論は、EU特有の磁場の下で展開されていることにも留意が必要である。具体的には、EU加盟国に対する規制機関の「独立性」の要請には、加盟国における規制執行の効率性・透明性の改善といった、日本にも同様に存在する課題へのアプローチのみならず、加盟国間の利害対立を調整して域内市場の統合を推進するという、EU固有の論理が伏在している。所有と規制の分離(3.1)は資本の自由移動の原則からの要請でもある73し、事業者からの距離の確保(3.2)もこれと踵を接している74。政治的影響力の排除も、EUの側からすれば、競争中立的な市場の創出を標榜して自国に有利な結論を志向する加盟国の政治の影響を可能な限り排除するための手段の一つである75。要するに、連邦ネットワーク庁の「独立性」は、多分にEUの行政連携構造に規定されているのであり76、日本法への含意は慎重に見極める必要がある。

※本稿は、総務省情報通信政策研究所情報通信法学研究会通信法分科会2020年度1回(2020年5月15日)における報告「ネットワーク事業規制を担う独立行政機関について-ドイツ連邦伝送網庁(Bundesnetzagentur)を手がかりに」を基礎とするものである。この間の新型コロナウイルス感染症の世界的なまん延により、予定していた資料収集等のスケジュールを大幅に見直さざるを得ず、脱稿が幾度も先延ばしになったことについて、研究所のスタッフの方々にお詫び申し上げる。当時の研究会にご参加いただいた諸先生方から多くの貴重なご質問を賜ったことに改めて感謝を申し上げるとともに、本稿をもってもなお十分に応答できていない点が多いことに御海容を乞う次第である。

※本研究は、東京大学ヒューマニティーズセンターLIXIL Ushioda East Asian Humanities Initiative公募研究(A)(個人研究)、JSPS科研費JP21K13191、JP 22H00041 およびJP 22K01133 の助成を受けたものである。(巽智彦)

Footnotes

1 東京大学法学部・大学院法学政治学研究科准教授。

2 この語の意味内容について、法学において細部まで共有された理解があるとは言えないが、本稿ではさしあたり、①自然独占性を備え、かつ②生活必需性のある役務を提供する事業のことを指して用いる。友岡史仁『経済行政法』133頁以下(弘文堂、2015)は、公益事業を、「ネットワーク産業と同義」(137頁)として、①の要素を基礎に置きつつ、「私たちの生活に不可欠となる公益的役務を安定的に提供するため、市場における自由な経済活動が行政上の規制を受けて制限される民間企業およびその経済活動を指す」(133頁。傍点筆者)として、②の要素を加味して定義している。他方で、舟田正之「『公共企業』の概念と『法制度』」同『情報通信と法制度』9頁(有斐閣、1995)〔初出:1987〕は、「一定の『法的独占』……が容認され」、かつ、「提供されるサービスが、一般消費者に対して、……物理的にも、また契約上も直接に供給され、その生活にとって高度の必需財である」場合、当該サービスを提供するものを「公共企業」と呼んでいる。

3 概観として、友岡・前掲註2) 第2部および第3部。

4 白石忠志「競争政策と政府」岩村正彦ほか編『岩波講座現代の法8――政府と企業』73頁以下(岩波書店、1997)、岸井大太郎「政府規制と独占禁止法」同『公的規制と独占禁止法』159頁以下(商事法務、2017)〔初出:2002〕、土田和博「独禁法と事業法による公益事業規制のあり方」同『経済法のルネサンス―独占禁止法と事業法の再定位』351頁以下(日本評論社、2022)〔初出:2015〕、友岡史仁「経済行政法の課題」同『経済行政法の実践的研究』5頁以下(信山社、2022)〔初出:2017〕など。

5 岸井大太郎「情報通信における市場支配力の規制と事業法・独占禁止法――『アメリカ型』と『EU型』:『分離モデル』と『統合モデル』」同『公的規制と独占禁止法』122頁以下(商事法務、2017)〔初出:2014〕。

6 岸井・前掲註5) 134頁。

7 比較法も織り交ぜた分野別研究として、藤原淳一郎『エネルギー法研究』(日本評論社、2010)、福田正樹『情報通信と独占禁止法』(信山社、2008)、友岡史仁『公益事業と競争法』(晃洋書房、2009)、同『ネットワーク産業の規制とその法理』5頁(三和書籍、2012)など。

8 ドイツの電気通信市場の動向や基本的な法制に関する情報(令和2年時点)は、総務省ホームページ「世界情報通信事情」のドイツの項目で、邦語で紹介されている(https://www.soumu.go.jp/g-ict/country/germany/index.html)。

9 近時の論稿として、Jürgen Kühling, Das Regulierungsrecht im Binnenmarkt, in: Enzyklopädie Europarecht Bd. 4, Europäisches Binnenmarkt- und Wirtschaftsordnungsrecht, 2. Aufl. 2021, § 1; Martin Eifert, Regulierungsstrategien, Grundlagen des Verwaltungsrechts, Bd. 1, 3. Aufl., 2022, § 19. 規整法の概要の紹介として、山本隆司「行政法システムにおける市場経済システムの位置づけに関する緒論」加藤一郎先生追悼『変動する日本社会と法』32 頁以下(有斐閣、2011)、巽智彦「規整法(Regulierungsrecht)について――電気通信分野を中心に」成蹊法学89号251頁(2018)。筆者の見るところ、規整法の対象は、①自然独占性を備え、かつ②生活必需性のある役務を提供する事業(本稿のいう「公益事業」)に近しいが、なお精査したい。

10 市場の「形成」という問題の捉え方について参照、岸井大太郎「ネットワーク産業における規制改革の展開と『市場形成』型規制」同『公的規制と独占禁止法』106頁以下(商事法務、2017)〔初出:2015〕。

11 体系的分析の先駆として、Jürgen Kühling, Sektorspezifische Regulierung in den Netzwirtschaften - Typologie, Wirtschaftsverwaltungsrecht, Wirtschaftsverfassungsrecht, 2004. 近時の論稿として、Matthias Ruffert, Sektorales Wirtschaftsrecht als Teil des europäischen Wirtschaftsrechts, in: Enzyklopädie Europarecht, Bd. 5, Europäisches Sektorales Wirtschaftsrecht, 2. Aufl. 2020, S. 37 ff.

12 舟田正之「特殊法人の組織法的諸問題」同『情報通信と法制度』299頁(有斐閣、1995)〔初出:1988〕、多賀谷一照「電気通信事業の法規制システム――その比較法的検討」同『行政とマルチメディアの法理論』250頁(弘文堂、1995)〔初出:1994〕、岸井大太郎「規制改革と独立規制機関・競争当局」岸井大太郎=鳥居昭夫編『公益事業の規制改革と競争政策』16頁以下(法政大学現代法研究所、2005)、伊藤正次「日本の行政委員会制度と規制機関の制度選択」岸井大太郎=鳥居昭夫編『公益事業の規制改革と競争政策』61頁以下(法政大学現代法研究所、2005)、寺田麻佑「情報通信分野における規制手法と行政組織」同『先端技術と規制の公法学』83頁以下(勁草書房、2020)〔初出:2016〕。

13 アメリカについて、鬼木甫「情報通信産業における競争と規制――日米比較と規制情報の伝達」ジュリ1099号21頁以下(1996)、栗田誠「規制当局と競争当局の関係」岸井大太郎=鳥居昭夫編『公益事業の規制改革と競争政策』85頁以下(法政大学現代法研究所、2005)、清原聖子「“日本版FCC”構想に関する論考―一独立行政委員会の政治的中立性の観点から」電子情報通信学会誌94巻5号354頁以下(2011)など。イギリスについて、廣瀬克哉「イギリスにおける独立規整機関」岸井大太郎=鳥居昭夫編『公益事業の規制改革と競争政策』41頁以下(法政大学現代法研究所、2005)、友岡史仁「公的規制の行政組織」同『経済行政法の実践的研究』26頁以下(信山社、2022)〔初出:2012〕。

14 ドイツ・EUについての先行業績として、稲葉馨「ドイツにおける独立規制機関」岸井大太郎=鳥居昭夫編『公益事業の規制改革と競争政策』23頁以下(法政大学現代法研究所、2005)、山本・前掲註9)、寺田麻佑『EUとドイツの情報通信法制』(勁草書房、2017)、福島卓哉「独立規整機関の組織法的統制――ドイツ電気通信法制の一断面」稲葉馨先生・亘理格先生古稀記念『行政法理論の基層と先端』537頁以下(信山社、2022)。

15 なお、電力、ガスなどの分野では、連邦法律を執行する権限が州に属している部分があり、連邦法律上も州規整庁(Landesregulierungsbehörde)による法律の執行が予定されている(§55 Abs.1 S.2 EnWG)が、州規整庁に関する分析は本稿の対象外とする。

16 同省は、2021年12月8日に発足したOlaf Scholz政権のもと、それまでの連邦経済・エネルギー省(Bundesminister für Wirtschaft und Energie)の名称を変更して発足した。

17 ただし、政府から一定の独立性を有する独立規制機関が置かれることは、比較法的には稀ではなく、むしろ日本の状況が特殊であるとの分析がある。岸井・前掲註12) 15頁。

18 Gesetz über die Bundesnetzagentur für Elektrizität, Gas, Telekommunikation, Post und Eisenbahnen von 7. Juli 2005 (BGBl. I S. 1970, 2009).

19 従来、水の供給は連邦ネットワーク庁の所管外であった(巽・前掲註9) 256頁)が、2021年のエネルギー経済法(EnWG)改正法(Gesetz zur Umsetzung unionsrechtlicher Vorgaben und zur Regelung reiner Wasserstoffnetze im Energiewirtschaftsrecht vom 16. Juli 2021)第3条により、連邦ネットワーク庁の所管に加えられた。

20 Abteilungは、民間団体等も含め組織における職務分掌の単位として一般的に用いられる言葉であり、その規模や機関構成全体の中での位置付けに応じて「局」、「部」、「課」などと訳されるが、それぞれ後述の「審判部」(註21) 参照)よりは大きな組織であると推察されること、またAbteilungの下にさらにUnterabteilungが存在するのが通例であることを踏まえて、さしあたり「局」と訳している。

21 Beschlusskammerは「決定部」と訳されることがある(寺田・前掲註14) 161頁)。Beschlussは一般的に合議体による判断ないしは決定を意味し、Kammerは地方裁判所(Landesgericht)の民事部(Zivilkammer)、刑事部(Strafkammer)を想起させることから、筆者もさしあたり「決定部」と訳した(巽・前掲註9) 257頁)。他方で、稲葉・前掲註14) 26頁、福島・前掲註14) 551頁は、Beschlusskammerを「審判部」と訳している。たしかに、行政手続における合議体の決定を指すものとして、日本で一般的なのは「(行政)審判」の語であり、本稿ではこちらの訳語を採用している。なお、連邦ネットワーク庁自身が採用している英訳は”Ruling Chamber”であり(https://www.bundesnetzagentur.de/EN/RulingChambers/RulingChambers_node.html)、世界情報通信事情(前掲註8))ではこれを「裁定室」と訳している。

22 Vgl., Organisationsplan der Bundesnetzagentur (Stand 08.07.22)(https://www.bundesnetzagentur.de/SharedDocs/Downloads/DE/Allgemeines/Bundesnetzagentur/UeberdieAgentur/Organigramm/OrganigrammMitNamen.pdf?__blob=publicationFile&v=44).

23 巽・前掲註9) 257頁。

24 Beiratは「諮問委員会」と訳されることがある(寺田・前掲註14) 160頁)。筆者もさしあたり「諮問委員会」と訳した(巽・前掲註9) 256頁)が、Beiratは必ずしも諮問を受けて答申を出すことのみを所掌としているわけではない。稲葉・前掲註14) 24頁、福島・前掲註14) 553頁はこれを「評議会」と訳している。連邦ネットワーク庁自身はBeiratをAdvisory Councilと英訳しており(https://www.bundesnetzagentur.de/EN/General/Bundesnetzagentur/AdvisoryCouncil/start.html)、Councilには「評議会」の訳を当てることがある(Council of Europaは例えば欧州評議会と訳される)ため、「委員会」よりは「評議会」が適切のように思われる(Bei- をどう訳出すべきかは悩ましいところである)。なお、Beiratは例えば有限会社(GmbH)の機関の一つとして置かれることがあるが、定訳があるのか判然としない(「顧問会」などと訳されるようである)。

25 概要を連邦ネットワーク庁がホームページ上にまとめている(https://www.bundesnetzagentur.de/DE/Allgemeines/DieBundesnetzagentur/BeiraeteAusschuesse/Beirat/start.html)。

26 2009年当時の下部組織について参照、寺田・前掲註14) 161頁。

27 連邦ネットワーク庁のホームページに、各審判部の概要と詳細へのリンクがまとまっている(https://www.bundesnetzagentur.de/DE/Beschlusskammern/BK.html)。

28 ドイツの電気通信法上、Vorleistungebeneという言葉が用いられており、これは最終顧客への電気通信役務の供給の前提となる(Vor-)電気通信役務の供給(Leistung)部分を指しているものと見受けられる(§33 TKG)。連邦ネットワーク庁自身が採用する英訳は” wholesale telecommunications market”であり、世界電気通信事情(前掲註8))ではこれを「電気通信卸売市場」と訳している。

29 特別濫用監視(besondere Missbrauchsaufsicht)とは、領域接続規制や接続料規制といった具体的な領域特定規制の対象からは外れるが、なお市場支配的地位の濫用と評価できる行為を受け皿的に補足する領域特定規制である(ここでは、§ 32 PostG)。とりわけ一般競争法との関係が問題となる(巽・前掲註9) 276-277頁)。

30 Gesetz zur Erleichterung des Ausbaus digitaler Hochgeschwindigkeitsnetze vom 04. 11. 2016 (BGBl. I S. 2473). これは、グラスファイバーを用いた高速インターネット回線のあまねく公平な普及のためのコスト削減を目指し、その共同利用に係る費用負担の規律等を設けた法律である。いわゆるコスト削減指令(Kostensenkungsrichtlinie)(Directive 2014/61/EU of The European Parliament and of The Council of 15 May 2014 on measures to reduce the cost of deploying high-speed electronic communications networks)を転換する法律でもあり、これによりドイツ電気通信法は大幅に改正された(Klaus-Dieter Scheurle/ Nils Kaienburg, in: Scheurle/ Thomas Mayen (Hrsg.), Telekommunikationsgesetz Kommentar, 3. Aufl., 2018, § 1 Rn. 53 ff.)。

31 デジネット法が転換したコスト削減指令は、多くの点で国内紛争処理機関(national dispute settlement body/ nationale Streitbeilegungsstelle)を置くことを加盟国に義務付けており、ドイツはデジネット法による電気通信法改正により連邦ネットワーク庁にこの役割を担わせることとした(§ 134a TKG a. F. 法典指令(後掲註33)の転換後は§ 214 TKG)。

32 ドイツにおいてこのテーマは、EU法が加盟国に求める規整機関の独立性の要請と、ドイツの基本法が求める行政機関の(民主的)正統性(Legitimation)との相克という観点(3.3参照)を中心に、かなりの議論の蓄積がある。近時のものだけでも下記のモノグラフィーがある。Kirsten Weißgärber, Die Legitimation unabhängiger europäischer und nationaler Agenturen, 2016; Eike Westermann, Legitimation im europäischen Regulierungsverbund - Zur demokratischen Verwaltungslegitimation im europäischen Regulierungsverbund für elektronische Kommunikation, 2017; Jae-Hoon Lee, Demokratische Legitimation der Vollzugsstruktur der sektorspezifischen Regulierungsverwaltung - Eine Untersuchung am Beispiel der Telekommunikationsordnung, 2017; Marc Bienert, Europäische Regulierungsagenturen - Demokratische Legitimation und rechtsstaatliche Kontrolle am Beispiel des Amtes der Europäischen Union für geistiges Eigentum und des Sortenamtes, 2018; Malte Kröger, Unabhängigkeitsregime im europäischen Verwaltungsverbund - Eine europa- und verfassungsrechtliche Untersuchung unionsrechtlicher Organisationsregelungen für Mitgliedstaaten anhand von Regulierungsagenturen, Datenschutzbehörden sowie statistischen Ämtern, 2020; Dominik Stolz, Die demokratische Legitimation der Europäischen Wertpapier- und Marktaufsichtsbehörde und ihrer Rechtsakte, 2021; Cornelia Kibler, Datenschutzaufsicht im europäischen Verbund - Unabhängigkeit, Effektivität, Rechtsschutz und Legitimation, 2021, Claudia Kawohl, Der Europäische Datenschutzverbund - Strukturen, Legitimation, Rechtsschutz, 2022.

33 Directive (EU) 2018/1972 of The European Parliament and of The Council of 11 December 2018 establishing the European Electronic Communications Code. この指令は、2002年の電気通信指令パッケージ(巽・前掲註9) 271頁)のうち枠組指令、認可指令、アクセス指令、ユニバーサル・サービス指令を全面的に改めた上で統合したものである(Erwägungsgrund (1))。解説として、Jürgen Kühling, Telekommunikationsrecht, in: Enzyklopädie Europarecht, Bd. 5, Europäisches Sektorales Wirtschaftsrecht, 2. Aufl. 2020, § 4.; Roland Broemel, Europäisches Telekommunikationsverwaltungsrecht, in; Jörg Philipp Terhechte (Hrsg.), Verwaltungsrecht der Europäischen Union, 2. Aufl., 2022, § 21.

ドイツの電気通信法(Telekommunikationsgesetz)は、同指令を転換すべく、2021年に全面的に改正された。Vgl., Gesetz zur Umsetzung der Richtlinie (EU) 2018/1972 des Europäischen Parlaments und des Rates vom 11. Dezember 2018 über den europäischen Kodex für die elektronische Kommunikation (Neufassung) und zur Modernisierung des Telekommunikationsrechts (Telekommunikationsmodernisierungsgesetz) vom 23. Juni 2021 (BGBl. I S. 1858).

34 枠組指令3条1項に対応する条文であるが、法典指令は、5条1項第2下部項において国内規整官庁が最低限担うべき任務を列挙するなどして、加盟国への要請の内容をより具体化している。Thomas Fetzer, in: Fetzer/ Joachim Scherer/ Kurt Graulich (Hrsg.), Telekommunikationsgesetz Kommentar, 3. Aufl., 2021, § 116 Rn. 2a.

35 福島・前掲註14) 559頁。

36 多賀谷・前掲註12) 250頁以下。Ruffert/ Schmidt, in: Säcker (Hrsg.), Telekommunikationsgesetz Kommentar, 3.Aufl., 2013, §116 Rn.13.

37 長谷部恭男「グローバル化の中の通信規制」ダニエル・フット=長谷部恭男編『融ける境超える法4――メディアと制度』170頁(東京大学出版会、2005)。

38 Matthias Ruffert, Grundfragen der Wirtschaftsordnung, in: Dirk Ehlers et al. (Hrsg.), Besonderes Verwaltungsrecht, Bd. 1 Öffentliches Wirtschaftsrecht, 4. Aufl., 2019, Rn. 27.

39 Ruffert/ Schmidt, a.a.O. (Anm. 36), §116 Rn.13. 規整-高権的機能と企業的機能の分離(Trennung von regulatorisch-hoheitlichen und betrieblichen Funktionen)とも表現されている。

40 人的独立性(personelle Unabhängigkeit)という言葉が、機能的独立性や政治的独立性(3.3)と並んで用いられることがあるが(vgl., Ruffert/ Schmidt, a.a.O. (Anm. 36), §116 Rn. 21; Fetzer, a.a.O. (Anm. 34), § 116 Rn. 11)、機能的独立性や政治的独立性を達成する手段の一つして人的独立性を位置付ける方が見やすいように思われる。

41 枠組指令3条2項1文と同旨である。

42 ドイツテレコムホームページ(https://www.telekom.com/en/investor-relations/company/shareholder-structure)。参考までに、日本では国および地方公共団体がNTTの株式を34.86%保有している(2022年8月8日現在)(https://www.ntt.co.jp/ir/shares/digest.html)。

43 Ruffert/ Schmidt, a.a.O. (Anm. 36), § 116 Rn.14; Fetzer, a.a.O. (Anm. 34), § 116 Rn. 12.

44 Gabriele Britz, Organisation und Organisationsrecht der Regulierungsverwaltung in der öffentlichen Versorgungswirtschaft, in: Michael Fehling/ Matthias Ruffert (Hrsg.), Regulierungsrecht, 2010, § 21 Rn. 39.

45 Britz, a.a.O. (Anm. 44), Rn. 39.

46 枠組指令3条2項1文は、「電気通信ネットワーク、電気通信設備または電気通信役務を提供するすべての企業から」と規定していたところ、法典指令は「すべての企業」を「すべての自然人または法人」に置き換えた。その含意は、「企業」に限らずあらゆる事業者が対象になる旨を明確にする点にあるものと推察される。

47 Johannes Masing, Soll das Recht der Regulierungsverwaltung übergreifend geregelt werden?, 66. DJT, Gutachten D, 2006, S. 52 ff.

48 Scheurle/ Kaienburg, in: Sceurle/ Mayen (Hrsg.), a.a.O. (Anm. 30), Einleitung I, Rn. 19. 後述する政治的独立性の観点からも(3.3)、審判部の手続には積極的な意味が付与されている(Mattias Ruffert, Regulierung im System des Verwaltungsrechts - Grundstrukturen des Privatisierungsfolgerechts der Post und Telekommunikation, AöR 124 (1999), S.279)。

49 多賀谷・前掲註12) 250頁以下。

50 Britz, a.a.O. (Anm. 44), Rn. 39, Ruffert/ Schmidt, a.a.O. (Anm. 36), § 116 Rn.15, Ruffert, a.a.O. (Anm. 38), Rn. 27.

51 「加盟国は、国内規整庁がその権限を党派性なくかつ透明に行使するよう配慮する」。

52 同改正により、枠組指令3条3項自体も以下のように改正されている。「加盟国は、国内規整庁がその権限を党派性なく、透明に、かつ①適切な期間内で行使するよう配慮する。②加盟国は、国内規整庁が、委ねられた任務を達成できるように、適切な財政的および人的資源を利用できるよう配慮する」(下線部筆者)。下線部①も②も、国内規整庁の「独立性」を強化するものというよりは、権限行使の相手方の利益の確保(下線部①)や、規整の実効性の確保(下線部②)に関わるものと解される。

53 「第4項及び第5項の規定に関わらず、市場の事前規整のため、または企業間の紛争の解決のために、第20条又は第21条に基づき権限を有する国内規整庁は、独立して行動し、EC/EU指令を転換する国内法に基づき委ねられた進行中の任務を達成することとの関係では、他の地位からの指示を仰がず、またそうした指示を受けない。このことは、各国の憲法との適合性の監督と矛盾しない。第4条に基づく審査庁のみが、国内規整庁の判断を停止し、または取り消すことができる」。

54 「加盟国は、国内規整庁の長および構成員が、国内法において事前に確定された権限行使の諸条件をもはや満たすことができない場合にのみ解任されうることを、保障する。関係する国内規整庁の長および構成員の解任に関する判断は、解任の時点までに公表されなければならない。解任された加盟国規整庁の長または構成員は、その理由を通知されねばならず、この理由付けがもともと公表されるわけではない場合には、その公表を求める権利を有しなければならない;その場合、理由付けは公表されなければならない。」

55 「第10条の規定に関わらず、国内規整庁は――内部的手続の遂行および人事の観点からも――独立して、かつ客観的に行動し、EU法に適合して透明で責任ある形で活動し、……」(下線部筆者)。下線部が改正により追加された文言である。

56 同法上は未だ連邦経済・エネルギー省と表記されているが、現在は連邦経済・気候変動省である(1.2参照)。

57 同法上は未だ連邦交通・デジタルインフラストラクチャー省と表記されているが、現在は連邦デジタル・交通省である(2.1参照)。

58 「連邦経済・エネルギー省または連邦交通・デジタルインフラストラクチャー省が行った指示(Weisungen)は、連邦官報において公表される」(§ 193 S. 1 TKG)。

59 同条は大臣から連邦ネットワーク庁に対する個別的指揮権を認めるものではなく、一般的指揮権を留保しているに留まるとの理解として、Klaus Ferdinand Gärditz, Die Organisation der Wirtschaftsverwaltung, in: Reiner Schmidt/ Ferdinand Wollenschläger(Hrsg.), Kompendium Öffentliches Wirtschaftsrecht, 5. Aufl., 2019, § 4, Rn. 29 ff. なお、同条は、1996年当時の電気通信法66条5項とは異なり、指示の全体を公表することを明確にした点に意味があり、むしろ国内規制庁に対する影響力行使の透明性を確保しているとの評価もある。Joachim Scherer, Kommunikationsrecht, in: Reiner Schulze/ André Janssen/ Stefan Kadelbach (Hrsg.), Europarecht, 4. Aufl., 2020, §37 Rn. 158.

60 福島・前掲註14)。

61 岸井・前掲註5) 144頁。

62 Oliver Lepsius, Ziele der Regulierung, in: Fehling/ Ruffert (Hrsg.), a.a.O. (Anm. 44), § 19, Rn. 58 f. Masing, a.a.O. (Anm. 47), S. 47 ff.は、連邦カルテル庁に規整権限を持たせればよいとの議論が長く存在してきたことを紹介しつつ、しかし独立の規整庁が必要である旨を強調している。とくにエネルギーの分野では、1998年まで一般競争法のみにより規律されていたエネルギー市場が十分な競争を確保できなかったとの認識が示されている(Franz Jürgen Säcker, Das Verhältnis von Wettbewerbs- und Regulierungsrecht, EnWZ 2015, 531 (532))。

63 Britz, a.a.O. (Anm. 44), Rn. 45.

64 これは枠組指令3条4項2文と同一である。

65 これは枠組指令3条5項を引き継いだ規定であるが、法典指令では情報交換にEU法上のデータ保護規定が妥当する旨が確認されている。

66 Vgl. Fehling/ Ruffert (Hrsg.), a.a.O. (Anm. 44).

67 註19) 参照。

68 中央省庁等改革基本法は、「国の行政機関における政策の企画立案に関する機能とその実施に関する機能とを分離することを基本とし、それぞれの機能を高度化するとともに、組織上の分担体制を明らかにし、及びそれらに係る責任の所在を明確化すること」を基本方針としたうえで(4条4号)、外局として置かれる委員会及び庁は、いわゆる大臣委員会等を除き、「主として政策の実施に関する機能を担うものとする」(16条4項)としている。

69 エネルギー法分野において政策決定がネットワーク庁に委ねられている一局面を描写したものとして、野田崇「大規模公共事業を実現する――参加と民主主義、そして専門性」行政法研究34号69頁以下(2020)。

70 巽智彦「個人情報保護を担う行政組織の展開」情報法制研究12号(近刊)。

71 典型として、郵政省電気通信審議会答申「日本電信電話株式会社の在り方について」(1996年)第6章2(3)曰く、「電気通信市場のように急速な技術革新による市場の変化が激しい分野においては、接続の基本的ルールの策定等、接続に関する政策を立案する機能と、その遵守状況の監視・裁定という機能とを一体として遂行することが、ネットワークの高度化・多様化に対応した的確かつ迅速な行政の遂行に資するものと考えられる」。参照、伊藤・前掲註12) 75頁以下。

72 たとえば、曽我部真裕「公正取引委員会の合憲性について」石川正先生古稀記念論文集『経済社会と法の役割』5頁(商事法務、2013)。

73 事業と規制の分離の文脈で問題視される黄金株(3.1参照)は、EU法上、資本の自由移動の原則との抵触が問題とされてきたものである。参照、小塚荘一郎「公益を理由とした株主の権利の制約:黄金株に関する欧州裁判所判決の教訓」上智法学論集52巻1・2号13頁以下(2008)、板垣勝彦『保障行政の法理論』419頁以下(弘文堂、2013)。

74 人材交流の制限が、所有と規制の分離(3.1)についても事業者からの距離の確保(3.2)についても機能し得ることについて、3.1参照。

75 この点は、加盟国の規整庁がEUレベルでの行政連携に組み入れられ(巽・前掲註9) 257-259頁)、加盟国の立法府および行政府が独自の決定の余地を失うという、作用法上の現象とも接している(「法律の留保」の問題について参照、巽智彦「ヨーロッパとドイツの規整コンセプトの衝突――電気通信分野における法律の留保を題材に」成蹊法学90号223頁(2019)、同「規整法と法律の留保――『多元的システム』における行政の正統性」法律時報91巻10号(2019))。

76 Britz, a.a.O. (Anm. 44), Rn. 51.

引用文献
  • 板垣勝彦『保障行政の法理論』(弘文堂、2013)
  • 鬼木甫「情報通信産業における競争と規制――日米比較と規制情報の伝達」ジュリ1099号(1996)
  • 岸井大太郎『公的規制と独占禁止法』(商事法務、2017)
  • 岸井大太郎=鳥居昭夫編『公益事業の規制改革と競争政策』(法政大学現代法研究所、2005)
  • 清原聖子「“日本版FCC”構想に関する論考―一独立行政委員会の政治的中立性の観点から」電子情報通信学会誌94巻5号354頁以下(2011)
  • 小塚荘一郎「公益を理由とした株主の権利の制約:黄金株に関する欧州裁判所判決の教訓」
  • 上智法学論集52巻1・2号(2008)
  • 白石忠志「競争政策と政府」岩村正彦ほか編『岩波講座現代の法8――政府と企業』(岩波書店、1997)
  • 曽我部真裕「公正取引委員会の合憲性について」石川正先生古稀記念論文集『経済社会と法の役割』5頁(商事法務、2013)
  • 多賀谷一照『行政とマルチメディアの法理論』(弘文堂、1995)
  • 巽智彦「規整法(Regulierungsrecht)について――電気通信分野を中心に」成蹊法学89号(2018)
  • 巽智彦「ヨーロッパとドイツの規整コンセプトの衝突――電気通信分野における法律の留保を題材に」成蹊法学90号(2019)
  • 巽智彦「規整法と法律の留保――『多元的システム』における行政の正統性」法律時報91巻10号(2019)
  • 巽智彦「個人情報保護を担う行政組織の展開」情報法制研究12号(近刊)
  • 土田和博『経済法のルネサンス―独占禁止法と事業法の再定位』(日本評論社、2022)
  • 寺田麻佑『EUとドイツの情報通信法制』(勁草書房、2017)
  • 寺田麻佑『先端技術と規制の公法学』(勁草書房、2020)
  • 友岡史仁『公益事業と競争法』(晃洋書房、2009)
  • 友岡史仁『ネットワーク産業の規制とその法理』(三和書籍、2012)
  • 友岡史仁『経済行政法』(弘文堂、2015)
  • 友岡史仁『経済行政法の実践的研究』(信山社、2022)
  • 野田崇「大規模公共事業を実現する――参加と民主主義、そして専門性」行政法研究34号(2020)
  • 長谷部恭男「グローバル化の中の通信規制」ダニエル・フット=長谷部恭男編『融ける境超える法4――メディアと制度』(東京大学出版会、2005)
  • 福島卓哉「独立規整機関の組織法的統制――ドイツ電気通信法制の一断面」稲葉馨先生・亘理格先生古稀記念『行政法理論の基層と先端』(信山社、2022)
  • 福田正樹『情報通信と独占禁止法』(信山社、2008)
  • 藤原淳一郎『エネルギー法研究』(日本評論社、2010)
  • 舟田正之『情報通信と法制度』(有斐閣、1995)
  • 山本隆司「行政法システムにおける市場経済システムの位置づけに関する緒論」加藤一郎先生追悼『変動する日本社会と法』(有斐閣、2011)
 
© 2022 総務省情報通信政策研究所
feedback
Top