2023 年 7 巻 1 号 p. 1-23
本稿では“道具としてのAI”の側面を考察する。著作物はあくまで人間による創作という前提、および現在の生成AIがはきだす品質や正確性、を考えれば、最後は人間によるファイナル・カットであることが求められるし、生成系AI出力を最終成果物とすることへの昨今の社会からの疑義にも違和感はない。一方、中間工程、中間財としては既に積極活用がみられ、クリエイティブの選択肢や作業効率の向上に貢献していると考えられる。
AIという道具は、i) UGCにみられるアマチュア・趣味層の創作活動への関心と参画を促し、なかには優れた生成物を生み出して、ii)それらが一部の有償のスタッフの仕事を奪うことも起きるが、iii) 全体にプロの仕事のうち煩わしい部分の効率化につながる側面もある、と考えられる。AIの進化に伴いi)、ii)に対して、iii)の性質は産業の拡大に対してトレードオフにあり、AIの進化と産業の拡大のバランスをとることにおいては、AI活用の仕方や生成物の質の高さ、人材のキャリア・パスなど、マネジメント事項は少なくない。