メタヴァースの世界において実用品がいかなる要件の下に知的財産法の保護を受けるかという問題がある。UGCの制作にAIを活用することにより、多種多様な実用品の大量のデザインが最終成果に何らかの形で反映されることになる以上、実用品に係る知的財産権をクリアする必要があるのはいかなる場合であるのかということを明確化する必要性は大きなものとなっている。そこで、本稿は、実用品のデザインについて登録意匠や、著作権の保護をメタヴァースの世界に無限定に及ぼす場合の問題点を明らかにするとともに、商品形態のデッド・コピー規制に係る不正競争防止法2条1項3号の2023年改正の意義を探求する。結論をいえば、これまで依拠なければ侵害なしという世界のなかで発展してきた創作の現場を、登録があれば依拠がなくても侵害となる登録意匠の世界で塗りつぶしていくことはかえって創作の現場を過度に混乱させることになるから忌避すべきであり、依拠がなければ侵害にならないという前提を堅持できる不正競争防止法上のデッド・コピー規制を活用していくことが望ましい、というのが本稿の見立てである。