情報通信政策研究
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寄稿論文
メディア州際協定54条にいう「認可不要な」放送とその具体化
杉原 周治
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2023 年 7 巻 1 号 p. 185-214

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抄録

ドイツでは、数年前から、とりわけインターネット上のライブストリーミング・コンテンツが認可を義務付けられる「放送」にあたるか否かが、判例・学説において激しく議論されてきた。その際、当該コンテンツが放送にあたるか否かの判断は、第一次的に、ドイツの放送法であるメディア州際協定にいう「放送」概念に照らして審査されることになる。すなわち、メディア州際協定にいう放送概念は、とりわけ「リニア」、「公衆」、「同時視聴」、「番組スケジュール」、および「ジャーナリスティックかつエディトリアル〔な制作〕」といった概念によって特徴付けられ、当該コンテンツがここでいう「放送」に該当するとみなされた場合、その提供のために放送認可が必要となる。

しかしながら、当該コンテンツがメディア州際協定にいう放送にあたるとしても、その提供のために常に認可が必要なわけではない。すなわち、メディア州際協定は、第54条において「認可不要な」放送に関する規定を設け、認可義務の原則の例外について定めているのである。具体的には、メディア州際協定54条は、①個人および公の意見形成にとってわずかな意義のみを有する放送、②6ヶ月間の平均で、同時接続ユーザーが20,000未満の放送プログラム、③将来的に6ヶ月平均で同時接続ユーザーが20,000人を下回ることが明らかに予測される放送は、認可を必要としない放送とみなされると規定する。それに加えて、同条項は、認可不要な放送を判断するための審査手続および判断手続については州メディア協会が規則によってこれを詳細に規律すると定めている。

このように、2020年11月7日発効のメディア州際協定は、従来から議論されてきた「放送」の概念の問題、および放送とライブストリーミング・コンテンツの区分をめぐる問題について一定の解決を試みたのである。そこで本稿は、このメディア州際協定54条にいう「認可不要な」放送に関する規定の内実、ならびに認可不要の確認に関する審査手続および判断基準について分析し、ドイツの法規制のあり方を検討することにしたい。

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