腸内細菌学雑誌
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フラクトオリゴ糖によるカルシウム吸収促進作用の分子生物学的メカニズム
佐久間 慶子
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2002 年 16 巻 1 号 p. 11-19

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抄録
フラクトオリゴ糖 (FOS) が, カルシウム, マグネシウム, 鉄など, ミネラル吸収を促進する効果をもつことが動物実験において数多く報告されており, 近年ヒトの臨床においても同様の効果が確認された.本総説では, FOSのカルシウム吸収促進機構の解明について, 分子生物学的技法をもちいた業績を中心にまとめた.小腸はカルシウム吸収の中心的な場であると考えられてきたが, 太田らにより, 大腸特に盲腸が重要な役割をもっことが報告された.彼らの結論は, FOSによるカルシウム吸収促進効果が盲腸切除ラットでは減弱したことに基づいている.FOSのカルシウム吸収促進効果にはカルシウムの細胞間ルートによる移動と細胞の中を通過するルートとの関与が考えられる.細胞を通過するルートは複数の過程によって構成されており, さらに各過程にはビタミンDによって調節されるいくつかの因子が関わっている.そのうちの一つがカルシウム結合タンパク質のカルビンディンD9k (CaBP) であり, CaBP遺伝子の上流にビタミンD受容体認識配列も確認されている.さらに, FOSを与えたラットの腸管粘膜細胞について, CaBPタンパク質とmRNAの発現を調べたところ, FOSは小腸のCaBP発現を抑え, 反対に盲腸, 結直腸では発現を増加させた.タンパク質とmRNAが同様の変化のパターンを示したことは, FOSの効果がCaBPの転写レベルに働いていることを示唆する.さらに, CaBP発現がカルシウム吸収量とFOS摂食量とに相関して変化したことは, カルシウム吸収の促進には細胞間ルートとCaBPの関わる細胞を通過するルートとの両ルートが関わっていることを示している.その機構として, FOSの発酵によって生ずる有機酸が重要な要因としてカルシウム移動の両ルートを調節しているという仮説が提唱されている.しかしながら, 分子レベルの解明は未だなされていない.
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© 財団法人 日本ビフィズス菌センター
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