腸内細菌学雑誌
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長期間抗生物質を投与された種牡馬の腸内細菌叢と分離株の抗生物質耐性についての症例報告
湯山 輝彦中西 信吾高井 伸二椿 志郎諸富 正己
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2003 年 17 巻 1 号 p. 9-14

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抄録

Mycobaoteriumaviumの感染が疑われ長期間抗生物質 (IsoniazidおよびRifampicin) を経口投与され, かっ疝痛の頻発と栄養状態の低下を呈した種牡馬の腸内細菌叢構成, 糞便中の短鎖脂肪酸組成, および糞便pHを調べた.抗生物質投与の腸内細菌叢への影響を明らかにするため, 抗生物質投与期, 休止期, および再投与期にそれぞれ数回ずつ糞便を採取してこれらの分析を行った.また同時に, 該当病態と腸内細菌叢の関連を明らかにするため, 同じ環境で飼養されている健康な種牡馬3頭を対照とし, これらの項目について比較検討を行った.さらに, 投与された抗生物質に対しての耐性獲得の有無を明らかにするため, 該当馬および対照健康馬から分離した各菌群の菌株についてこれらの抗生物質に対する最小発育阻止濃度 (MIC) を測定した.抗生物質投与期と休止期の比較ではいずれの測定項目においても顕著な差が見られなかった.分離した各種腸内細菌菌株の抗生物質感受性試験では, Isoniazidに対してはすべての菌のMICが500μg/ml以上で耐性を示し, Rifampicinに対しては菌株によってMICが異なったが長期間抗生物質投与種牡馬, 健康馬ともに高い耐性を示す菌株が分離された.健康馬との比較では, 該当馬の糞便中短鎖脂肪酸濃度は明らかに高く, 糞便pHは明らかに低かった.また腸内細菌叢構成においては, Bacteroidaoeae, Lactobaoillus, および総菌数が該当馬で高値を示した.以上の結果, および剖検時の所見から, 該当馬で見られた腸内細菌叢や糞便pH, および短鎖脂肪酸濃度の健康馬との違いは, 投与された抗生物質の直接の影響によるものではなく, 消化管の機能的な障害によるものであると推測された.

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© 財団法人 日本ビフィズス菌センター
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