日本経営工学会論文誌
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リアルタイム単品商品情報を用いた店舗間流通(横もち)の収益に与える影響についての考察 : RFIDがもたらす細粒度情報を利用した新規ビジネスモデルについての検討
稲葉 達也
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2007 年 58 巻 2 号 p. 115-124

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抄録

本研究は,RFID(Radio Frequency Identification)普及の阻害要因と考えられている,コストとメリットのアンバランスの問題を解消するための新しいビジネスモデルの提案と評価を行ったものである.本研究では,RFIDで取得可能となる細粒度の商品情報を利用して,小売店の複数店舗が,お互いの在庫情報を単品レベルでリアルタイムに共有し,自店舗に在庫がなくとも他店舗の在庫を自店舗の顧客に販売することを可能とするプロセス(横もち)を実現した時に,商品需要が,単一期の確率分布需要問題(Single period Stochastic Problem:SSP)に従う場合,小売店,サプライヤー及び,チャネル全体の利益が増大することを示した.また,横もちする際のハンドリングコストを考慮した場合,一般にそのコストが上限値よりも高い場合には,横もちによる小売店の利益が増大しなくなり,小売店において横もちを実施するインセンティブが働かなくなってしまうが,その場合にもサプライヤーが,小売店のハンドリングコストの一部を負担するという新たなビジネスモデルによって,小売店,サプライヤー,チャネル全体,それぞれの利益を増大させることを示した.この結果,提案のビジネスモデルは,RFIDがサプライチェーン全体に利益をもたらす技術であることを示すとともに,チャネル内での情報共有を促進する可能性があることを示している.

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© 2007 公益社団法人 日本経営工学会
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