日本経営工学会論文誌
Online ISSN : 2187-9079
Print ISSN : 1342-2618
ISSN-L : 1342-2618
投資家の価値判断を反映したSRI投資銘柄選択比率の決定方法 : ファジィ・エントロピーを用いた重みつき多因子情報路モデル
上原 衛山下 洋史大野 高裕
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 58 巻 2 号 p. 125-135

詳細
抄録

近年,投資家はCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)に対する企業の取り組み姿勢によって投資先を決定するSRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)に注目している.しかし,現状では必ずしも投資家のニーズや価値判断を十分に反映したSRIスクリーニングが行われていないようである.本研究では,現状のSRIスクリーニングの投資銘柄選択と選択比率の決定における課題を整理し,それらの課題を克服するための投資銘柄選択比率決定方法に関する新たなモデルを提示する.具体的には,あいまいな境界をもっている集合(ファジィ集合)から推論を行う際に,不確定な情報量を表現するファジィ・エントロピーを考慮して推論を行う必要があることに鑑み,不十分な証拠に基づく偶然性のあいまいさと漠然性のあいまいさが介在する主観的な判断を表現した「ファジィ・エントロピーを用いた多因子情報路モデル」を拡張し,新たに「ファジィ・エントロピーを用いた重みつき多因子情報路モデル」を提示する.このモデルによって,SRIスクリーニングの投資銘柄選択と選択比率の決定における課題の性格を捉えた上で,人間の自由勝手な選択行動(偶然性+漠然性:ファジィ・エントロピー)と,各銘柄(代替案)を特徴づける(CSRの)特性に関する満足感(平均特性値)の両面に,投資家の価値判断を評価ウェイトに反映した,投資銘柄選択比率の意思決定過程を簡潔に表現する.さらに,提案モデルについてアンケート調査による適用例を利用して,SRI投資銘柄の選択比率を推定し,実際の選択比率と比較・検討する.

著者関連情報
© 2007 公益社団法人 日本経営工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top