本稿では,数百品種が複数種のリソースを待ち合わせて共用する並列機械生産システムに対して実用実績を持つ分散協調型スケジューリングのコアエンジンP3D法(Pseudo Periodical Priority Dispatching)を,同様に非対称段取り時間をもつ自動車部品の後補充生産に応用するため,機械限定,仕掛り上下限,および段取り禁止シフトを考慮して改良した2種の優先度評価と機械最適割付けを加えて拡張したP3D-QAP法を提案・検証した.検証では,実企業の生産工程と受注データを使用し,従来法と現場ノウハウを加えた実績,後補充向け最早納期順処理(後補充EDD),および,部品使用の平準化に用いられる目標追跡法を部品メーカ向けにアレンジした実績追跡法と,納期基準・工程基準・滞留時間基準の3つの観点で比較した.P3D-QAP法が,工程基準の各種指標を良好な水準に維持しつつ,特に課題であった納期遵守率,納期超過時間,メイクスパンを大幅改善する効果が認められた.工程需給の考慮と拡張の効果と考えられる.