抄録
資金調達が多様化している今日, 増大した資産に必要な資金の調達源泉決定は, 企業の財務意思決定問題のなかでも重要なものとなっている.企業では長期的な目標水準となる資本構成が存在すると考えられるが, 企業外部者の調達に対する制約等により, 各期の資金到達は時間とともに不規則な変動を示すことが多い.そこで本研究では, 資金調達の不規則な変動について, 金融機関および一般投資家の企業評価を調達に対する制約として組み込んだ多次元自己回帰モデルによる時系列解析を行い, 将来の資金調達額および資本構成の予測を行った.具体的には, 資金調達額の変動を資産要求額よりもたらされる傾向変動とそれ以外の変動に分解し, この変動を企業外部の調達に対する制約および調達源泉間により据えた.このモデルにより傾向変動だけでは把握できない資金調達を適確にとらえることができ, 将来の資本調達予測についても精度を高めることができた.