抄録
本研究では, 多段階生産在庫に対する生産指示方式について, 特に傾向変動を伴う需要系列に対する押出し型と引張り型の生産指示方式の特性について研究している.そのために, 関連する従来の研究を整理した後, 傾向変動を伴う需要系列, それに対する生産在庫システム, および, 生産指示方式のモデルを構築した.さらに, 構築したモデルについて, 各生産指示方式の生産量と在庫量の特性を解析した.その結果, いずれの生産指示方式とも, 各工程の生産量の期待値は当該工程から市場までのリードタイム分先の需要量の期待値に等しくなり, 各工程の在庫量の期待値は当該工程の安全在庫量に等しくなることを明らかにした.また, 需要予測を行う際の移動平均期間を長くしていくと, 押出し型生産指示方式の生産量や在庫量の分散値は工程を遡るときの増幅が抑えられ, 引張り型生産指示方式のそれらよりも小さくなることを明らかにした.