マリンエンジニアリング
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論文
Experimental Study on Dissociation Rate and Dissociation Limit Temperature of Methane Hydrate Pellets for Seaborne Transport of Natural Gas Hydrate Pellets
城田 英之太田 進
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2010 年 45 巻 6 号 p. 899-906

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抄録

海上輸送中の荷役の安全の観点からは,ばら積み貨物としての天然ガスハイドレートペレット(NGHP)の分解によって,貨物温度が急激に低下する現象が起こらないことを確認することが重要である.このためには、NGHPの安全かつ経済的な輸送という意味において,NGHPの分解速度が充分に低い温度領域の下限界(DLT)が存在するか否かを確認する必要がある.しかしながら,現時点では天然ガスハイドレート(NGH)の自己保存性メカニズムに関する知見が充分でないため,NGHPのDLTを理論的に決定することができず,実験によって見積もらざるを得ない. 著者らは,温度範囲-35℃~-5℃,大気圧条件下で,擬似断熱状態とした試料ペレット50個の分解挙動を計測するための実験装置を設計・製作した.MHP及びNGHPは分解によってその温度が初期状態から下がる性質を有するため,ペレットの分解に起因する温度低下によりペレットの分解反応が加速され,その結果としてますますペレットの温度が下がる可能性がある.安全上問題のあるこうした現象が実際に起こるか否かを確認するため,著者らは,上述の実験装置を使用して,擬似断熱状態下におけるメタンハイドレートペレット(MHP)の分解速度と温度との関係,ペレットの初期ガス包蔵量が分解速度に及ぼす影響などについて調べた.今回実施した24時間の擬似断熱実験では,(初期ガス包蔵率が高く分解速度も大きい)ペレット製造後の経過日数の浅いMHPを対象とした場合においても,荷役の安全上問題となる現象は見られず,DLTの存在も確認されなかった.さらに,大気圧条件下では化学的に不安定な状態にある試料ペレットのハイドレート化率を精度良く推定する手順について検討し,その妥当性(ペレット数量,ばらつきの評価など)を確認した.

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© 2010 公益社団法人 日本マリンエンジニアリング学会
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