日本食生活学会誌
Online ISSN : 1881-2368
Print ISSN : 1346-9770
ISSN-L : 1346-9770
研究ノート
郷土料理を学校給食へ導入するための意識および嗜好調査
—大村寿司給食の導入と実施可能性—
山王丸 靖子鍋島 しのぶ山口 鏡子藤原 ヒロ子石森 光恵中谷 友美武藤 慶子岩瀬 靖彦
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 19 巻 1 号 p. 60-68

詳細
抄録

  長崎県の郷土料理である大村寿司を学校給食で提供することを目的とし, 学校栄養職員に対する郷土料理および大村寿司に対する意識調査を実施した。さらに大村寿司給食を実施し喫食者に対する嗜好調査を行った。
  学校栄養職員のほとんどが, 郷土料理に興味があり, 食文化の継承・普及への意欲は高く, 大村寿司に対する継承意欲も高かったが, 給食における実施率は低かった (12.5%)。「大村寿司給食を実施したい (30.3%)」と積極的な回答が得られた理由で最も多かったのは「行事食・食文化教育として利用できる」であった。一方, 「大村寿司給食を実施したくない・どちらでもない (69.7%)」理由としては,「調理器具がない」「作業工程が複雑」「衛生管理ができない」等であった。そこで, これらの問題点を検討し, 大村寿司給食の作業工程表を作成した。
  大村寿司給食を実施し, 嗜好調査を行ったところ, 喫食した児童・生徒のうち, 57.6%が「美味しい」, 38.8%が「また食べたい」と回答し, 特に低学年で食意欲が高かった。さらに, 教員からも郷土料理および大村寿司給食に対する肯定的な意見を多数得た。これらの結果から, 実施が困難であると考えられている郷土料理であっても学校給食への導入可能性が示唆された。今後も, 多くの郷土料理が学校給食で提供され, 「食」を通じた幅広い教育に活用されることが期待される。

著者関連情報
© 2008 日本食生活学会
前の記事 次の記事
feedback
Top