日本食生活学会誌
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若年女性におけるやせが自律神経機能に及ぼす影響
小平 洋子辻 玲子太田 徹八幡 剛浩
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2001 年 12 巻 3 号 p. 242-247

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抄録

若い女性で志向が高まっている「やせ」が自律機能に及ぼす影響を本学の女子学生を対象に調べた. 22名の被験者の内, 5名が「やせ」ており (痩身), 17名は通常の範囲にあった (普通). 肥満の者はいなかった. 痩身では体重, BMI, 肥満度, 体脂肪率は低いが, 身長, 鼓膜温, 血圧, 脈拍には両グループで差はなかった. また3日間に亘る栄養調査を行ったところ, 1日当たりのエネルギー摂取量は普通でも平均エネルギー摂取量を下回っており, 若い女性の「やせ」志向の現状が裏付けられた. またエネルギー摂取量, たんぱく質および炭水化物の摂取量には両グループで差がなかったが, 脂質の摂取量は痩身で有意に低かった. 自律機能の指標として寒冷末梢血管拡張反応を調べたところ両グループともその反応が著しく低く, 痩身の反応の方がより低かった. このことは, 痩身では交感神経活動が亢進しており, これがエネルギー摂取量が同じであるのに体型に差が出ている要因となっているものと考えられる. 痩身では寒冷障害に対する局所性の防御機構がうまく働かないことが示されたが, このことは生命を守るための生体の自律機能全体が変調を受けていることを示唆しており, 単に冷え性や神経痛の発症・増悪の可能性を高めるだけではなく, 身体の種々機能の変調, 特に抵抗力の低下による生体防御能力の低下という問題につながっていることが考えられる. 健康な体を保つために, 外形上の誤った美しさに対する志向を正してゆくことが重大な課題である. また集団給食を管理する栄養士は個人の栄養状態を良くし, 望ましい食習慣を持つきっかけとなる質の高い食事の提供を考える必要がある.

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