抄録
症例は68歳,女性。マンモグラフィ(以下,MMG)併用乳癌検診にて右乳房「U」にカテゴリー3の腫瘤を指摘され,要精検となった。視触診で両側乳房に腫瘤は触知されなかった。また乳頭分泌も認めなかった。超音波検査(以下,US)にて右乳房「C」領域に7×3mm,楕円形,境界明瞭で整,内部無エコーの単純嚢胞を孤立性に認めた。他に異常所見はなく,経過観察とした。1年6カ月後,同部位の嚢胞が触知されるようになり,US 上12×9mm に増大していたため,穿刺吸引細胞診を行った。内容液は血性漿液性で,class Ⅱであった。穿刺後消失したため,経過観察とした。さらに1年後,同部位に3個の小嚢胞が出現した。その後,分葉状に変形し触知されてきたため,2回目の穿刺吸引細胞診を行った。血性漿液性で,class Ⅴであった。確定診断のため摘出生検し,非浸潤性乳管癌と診断した。同部位の追加切除およびセンチネルリンパ節生検術,右乳房への放射線照射(50Gy)を施行した。内分泌療法を行っており,術後約5年経過した現在,再発,転移は認めていない。嚢胞内乳癌は稀であり,全乳癌の0.5~2.0%とされる。一方,嚢胞は乳腺外来においては日常的に認められる腫瘤である。症状がなく,単純嚢胞と診断された場合,経過観察されることが一般的である。非常に稀ではあるが,本症例のような嚢胞内乳癌の存在を念頭に置き,対処すべきである。