日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
Print ISSN : 0918-0729
ISSN-L : 0918-0729
21 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
第21回学術総会/シンポジウム
特別寄稿
  • 森本 忠興
    2012 年 21 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    本邦では,マンモグラフィ検診受診率は二十数%と低く,乳癌死亡は増加している。一方,欧米では,早くからマンモグラフィ検診が導入され,受診率70~80%に及び,1980年代後半以降から乳癌死亡率の低下がみられている。本邦と欧米のマンモグラフィ検診受診率の差は,本邦の乳癌検診の進め方にあったと考えられる。本稿では,本邦の乳癌検診の歴史のなかで,1991年2月に日本乳癌検診学会が設立された経緯,発展状況,今後の課題等について述べた。今後,本邦では,受診率向上,マンモグラフィのアナログからデジタル化移行,ソフトコピー診断(モニター診断),40歳代のデンスブレストに対する超音波検診,MRI 画像診断の進歩等,多くの課題がある。本学会が2010年に任意団体からNPO 法人格を得たことを契機に,本学会のさらなる発展を期待したい。
第21回学術総会/全国集計報告
原著
  • 白岩 美咲, 遠藤 登喜子, 森田 孝子, 丹羽 多恵, 大岩 幹直, 西山 千嘉子
    2012 年 21 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ(MG)検診の精密検査施設における超音波検査体制の現状を把握し,問題点を検討するために,中部7県のマンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)施設画像認定施設のうち,明らかな検診施設を除く181施設にアンケートを発送した。回収99施設(回収率54.7%)中,精密検査で乳房超音波検査を実施していると回答した82施設を対象として,乳房超音波検査の実態を解析した。検査担当者は,医師のみ24,医師と他職種40,医師以外のみ18施設だった。医師による検査の施行場所は診察室28,検査室26,両方が10施設で,外来診察時51施設(79.7%)での検査実施が多かった。平均検査所要時間は有症状初診9.8,同経過観察7.5,無症状初診9.6,同経過観察7.6分だった。一方,医師以外の平均検査所要時間は,有症状初診16.7,同経過観察14.4,無症状初診14.7,同経過観察14.2分で,医師より長かったが,単独(87.9%),MG の情報不足(50.0%)で実施し,判定は医師のみ(65.5%),静止画(93.3%)で行うことが多かった。また,専門医や検査士の資格取得率は16.2%,日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)の講習会受講率は24.7%であった。今回のアンケート調査から,現状ではMG の軽微な異常に対する乳房超音波検査には不十分な条件が多く,精密検査体制の整備対策が必要であると考えられた。
  • ―受診率50%達成に向けて―
    小林 茂樹, 田中 幸夫, 松尾 みち子, 熊下 利香, 中井 昌弘, 川口 達也, 近藤 偲瑞子, 永澤 直樹, 山田 隆憲, 荻野 豊, ...
    2012 年 21 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    NPO 法人三重乳がん検診ネットワークは2010年4月より三重県から委託を受け,乳がん検診等受診率向上事業を開始した。乳がん検診受診率50%を達成するための調査として,県内乳がん検診の実態調査を行った。2009年度乳がん検診を対象として,委託側(市町)と受託側(検診実施機関)の両者に調査を行った。委託側調査は,住民検診者数で,視触診およびマンモグラフィ(MMG)とMMG 単独の件数を県内全市町(29)から回答を得た。受託側調査は県内の乳房X 線撮影装置を保有している全52機関(検診実施48機関)に行い,2009年度のMMG 撮影状況,次年度以降に実施可能な余力および必要な人員に関するアンケート調査を行った。県内在住者に対するMMG 撮影総件数は93,525件で,2009年度40~74歳女性人口を分母として,推定連続受診者数を差し引いた受診率は27.5%であり,一方で逐年受診者が30%以上を占めていることが判明した。次年度以降に増加可能な乳がん検診件数は126,950件で,2009年度の乳がん検診実施件数と合わせると,2011年度以降に達成可能な乳がん検診受診率は75.2%であることが判明した。この受診率を達成するためには,視触診医師,撮影技師ともに2割強の人員増強が必要であることも判明し,人材支援の検討が必要である。受診率50%以上を達成するためには,新規受診者への啓発とともに,隔年受診の周知徹底が重要な課題である。
  • 俵矢 香苗, 久保内 光一, 福田 護, 八十島 唯一, 萩原 明
    2012 年 21 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    横浜市の乳がん検診は二次読影判定会に特色がある。1回に4~5名の読影医が参加し,まず各々の読影医が二次読影を行う。一次と二次読影判定が一致する場合は,その判定を最終判定とする。判定結果が異なる場合,当日の二次読影医4~5名の合議により最終的な読影判定を決定する。今回,この方式が検診の精度管理に有用かを検討した。平成18,19年度の受診者を対象に,一次と二次読影判定の結果を比較した。一次または二次判定が要精検と判定すればすべて要精検と判定する方式(方式A)と二次読影判定会方式(方式B)での要精検率,陽性反応適中度を比較した。また二次読影判定医の読影医個人別,読影グループ別の要精検率の比較も行った。成績:要精検率は平成18年度方式A:8.8%,方式B:5.5%,平成19年度方式A:8.8%,方式B:5.8%であった。陽性反応適中度は平成18年度方式A:2.1%,方式B:3.2%,平成19年度方式A:2.6%,方式B:4.0%であった。いずれも方式B が優れていた。個人別の要精検率は最小2.4%,最大10.11%であるのに対し,グループ別の要精検率は最小4.7%,最大8.2%であった。グループ別の要精検率は個人別に比し,ばらつきが少なかった。まとめ:横浜市マンモグラフィ二次読影判定会では一次と二次の判定が異なる場合,複数の二次読影医による合議判定を最終判定としている。この方式は個人の読影傾向を平均化でき,要精検率および陽性反応適中度の適正化に寄与していることが示された。
症例報告
  • 津田 万里, 齋藤 雄紀, 大下内 理紗, 寺尾 まやこ, 寺田 瑞穂, 盛岡 徹, 新倉 直樹, 岡村 卓穂, 鈴木 育宏, 梅村 しのぶ ...
    2012 年 21 巻 1 号 p. 78-81
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は42歳,閉経前女性。2009年12月の乳癌検診にて触診およびマンモグラフィにて左C 領域に異常を指摘され,精査目的に当院紹介となった。既往歴は特になし。乳癌の家族歴はなし。身体所見では左乳房C 領域に径4cm の円形で弾性やや硬,表面平滑,可動性良好な腫瘤を触知した。腋窩リンパ節は触知しなかった。マンモグラフィでは左乳房C 領域に5×3.5cm 大の分葉状で,境界一部不明瞭な等濃度の腫瘤陰影を認めた。カテゴリー4と診断した。超音波検査では同部位に低エコーで形状不整,内部不均一な境界明瞭粗雑,微細石灰化を伴い前方境界線の断裂を認める腫瘍を認めた。浸潤癌が疑われた。針生検を行ったところ,悪性像は認められなかった。確定診断目的に切開生検を行ったところ,乳腺症型線維腺腫の診断であった。
  • 有村 俊寛, 高崎 隆志
    2012 年 21 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性。マンモグラフィ(以下,MMG)併用乳癌検診にて右乳房「U」にカテゴリー3の腫瘤を指摘され,要精検となった。視触診で両側乳房に腫瘤は触知されなかった。また乳頭分泌も認めなかった。超音波検査(以下,US)にて右乳房「C」領域に7×3mm,楕円形,境界明瞭で整,内部無エコーの単純嚢胞を孤立性に認めた。他に異常所見はなく,経過観察とした。1年6カ月後,同部位の嚢胞が触知されるようになり,US 上12×9mm に増大していたため,穿刺吸引細胞診を行った。内容液は血性漿液性で,class Ⅱであった。穿刺後消失したため,経過観察とした。さらに1年後,同部位に3個の小嚢胞が出現した。その後,分葉状に変形し触知されてきたため,2回目の穿刺吸引細胞診を行った。血性漿液性で,class Ⅴであった。確定診断のため摘出生検し,非浸潤性乳管癌と診断した。同部位の追加切除およびセンチネルリンパ節生検術,右乳房への放射線照射(50Gy)を施行した。内分泌療法を行っており,術後約5年経過した現在,再発,転移は認めていない。嚢胞内乳癌は稀であり,全乳癌の0.5~2.0%とされる。一方,嚢胞は乳腺外来においては日常的に認められる腫瘤である。症状がなく,単純嚢胞と診断された場合,経過観察されることが一般的である。非常に稀ではあるが,本症例のような嚢胞内乳癌の存在を念頭に置き,対処すべきである。
feedback
Top