日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
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新しい検診システム
次世代乳癌検診システムの構築に向けて-乳癌検診個別化への提言
大田 浩司 笠原 善郎田中 文恵前田 浩幸田中 正樹
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2015 年 24 巻 1 号 p. 54-59

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抄録

【目的】福井県乳癌住民検診のデータを用いてマンモグラフィ検診の感度を決める最大要因を検索し,不利益の少ない乳癌検診の個別化実現を目的に検討を行った。【対象と方法】2004年4月1日から2009年3月31日までに福井県乳癌住民検診を受診した延べ62447名を対象とした。地域癌登録と検診台帳とを照合し,真陽性例,偽陰性例を抽出,マンモグラフィ単独の感度,特異度を解析し,さらにこれらを年代別および背景乳腺濃度別に解析した。感度(偽陰性)に対する年齢,背景乳腺濃度, 家族歴のオッズ比解析には,2項ロジスティック回帰分析を用いた。【結果】5年間に167例の検診発見癌と49例の偽陰性癌が診断された。40歳代,50歳代,60歳代,70歳代の感度はそれぞれ69.8%, 66.7%,77.3%,83.8%であった。乳腺濃度別感度では,脂肪性,乳腺散在,不均一高濃度,高濃度 の感度はそれぞれ100%,78.9%,68.5%,33.3%であった。2項ロジスティック回帰分析では,年齢,背景乳腺濃度,家族歴の3項目のうち,背景乳腺濃度のみが有意な決定因子であり (p=0.03, オッズ比0.45),年齢は40歳代でオッズ比が1.29と上昇していたが有意差は認められなかった。【結語】より高度な個別化を実践するためには背景乳腺濃度を個別化指標とした検診システムを提言する。

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