日本乳癌検診学会誌
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検診発見乳癌の生物学的特性
高知県における対策型マンモグラフィ検診発見浸潤性乳管癌の生物学的特性の検討
安藝 史典 伊藤 末喜山川 卓杉本 健樹藤島 則明甫喜本 憲弘高畠 大典福山 充俊川村 貴範尾崎 信三沖 豊和
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2015 年 24 巻 2 号 p. 196-202

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抄録

(はじめに)マンモグラフィ検診で発見された乳癌の生物学的特性を明らかにするために,高知県における対策型マンモグラフィ検診発見乳癌と外来発見乳癌について比較し検討を行った。 (対象・方法)2004年から2006年までの高知県の対策型検診発見乳癌179例のうち自覚所見のなかった浸潤性乳管癌(以下,対策型発見乳癌)96例と,高知県内8医療機関で診断治療された原発乳癌から,任意型検診で発見されたものを除いた40歳以上の浸潤性乳管癌(以下,外来発見乳癌)506例について比較検討した。病理組織学的診断は乳癌取扱い規約第17版を用いた。有意差検定は,Fisher 検定,χ2検定にて行った。 (結果)対策型発見乳癌と外来発見乳癌を比較すると,臨床病期のI 期は72例(75.0%)と239例(47.2%)で有意に対策型発見乳癌が早期であった(p=0.00010972)。病理学的浸潤径の平均は1.4cmと2.2cm,リンパ節転移率は17例(17.7%)と142例(28.1%)で対策型発見乳癌が早期の傾向であった。ER 陽性率とHER2陽性率には差がみられなかったが,核グレード3は17例(17.7%)と126例(24.9%)であり,対策型発見乳癌で有意に少なかった(p=0.0137353)。再発率は6.2%と16.2%であり,対策型発見乳癌で有意に低かった(p=0.00486888)。 (まとめ)対策型発見乳癌は外来発見乳癌と比較して,病理学的浸潤径の平均が小さく,リンパ節転移率は低い傾向であった。ER,PgR,HER2の陽性率には差がないものの,核グレード3は対策型発見癌で有意に少なかった。対策型発見乳癌は外来発見乳癌よりやや早期に発見され,その生物学的特性には差異がある可能性が示唆された。

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