日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
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ハイリスク女性に対する検診をどうするか
遺伝性乳癌・卵巣癌(HBOC)における乳癌診療の対策
大住 省三 清藤 佐知子高橋 三奈青儀 健二郎杉本 奈央金子 景香
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電子付録

2015 年 24 巻 2 号 p. 235-240

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抄録

遺伝性乳癌・卵巣癌(HBOC)は乳癌症例全体の3~5%程度を占めると思われる。この疾患はBRCA1 あるいは2の生殖細胞系列での病的変異が原因である。HBOC の診療は乳癌あるいは卵巣癌を発症した人の発症年齢,その癌のサブタイプや組織型,既往歴,家族歴などからHBOC である可能性を絞り込むことから始まる。HBOC の可能性の高い患者,そのご家族に病気が遺伝的体質で起こった可能性が高いことをお伝えし,遺伝カウンセリングを行う。遺伝カウンセリングではHBOCという病気の説明,HBOC であるかどうかを調べる方法としての遺伝子検査の説明,遺伝子検査を受けて変異がある場合とない場合での意味合いについての説明とその対処法の説明,遺伝子検査を受けない場合の対処法の説明などをご本人ならびに(可能な限り)ご家族と一緒に聞いていただき,今後の対処法を相談する。HBOC での乳癌高リスクへの対処法の第一選択は,25歳から半年ごとの視触診と1年ごとの造影MRI での乳房のサーベイランスを実施することである。現実的にこれらを実施するには多くのハードルがあり,病院全体として取り組む必要がある。その中でも遺伝カウンセラー等のパラメディカルの存在は特に重要である。当院での遺伝カウンセラーを中心とした家族歴聴取からサーベイランスまでの診療体制の紹介ならびに世界的なサーベイランスの有効性に関するエビデンスを紹介する。

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