2017 年 26 巻 1 号 p. 58-61
「がん登録等の推進に関する法律(以下,がん登録推進法)」による全国がん登録システムを用いて,がん検診の精度(感度・特異度)の評価を行う際の法的な手続きと課題について検討した。精度評価を行うには,がん検診受診者の名簿とがん登録データベースの名簿とのリンケージが必須であり,匿名化されていないがん罹患情報を利用する必要がある。その際,実施主体によって,利用手続きや対象者からの同意の要否が異なる。研究者が第二十一条に基づいて実施する場合,対象者から研究利用に関する同意を得ることが条件となる。一方,都道府県が第十八条に基づいて実施する場合,対象者の同意は必須とされない。対象者から研究利用に関する同意を得ることは,事務的な負担が大きく,またセレクション・バイアスが生じる恐れがある。したがって,がん検診の精度評価を行う際は,都道府県が実施主体となって手続きを行い,データ解析などの作業を研究者に委託するという形をとれば,事務的にも学術的にも最大の効果と効率が期待される。その実現に向けて,本学会も都道府県に対して訴えかけていく必要があると思われる。