日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
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原著
対策型検診におけるマンモグラフィ二重読影の検査精度
大田 浩司 田中 正樹田中 文恵前田 浩幸笠原 善郎
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2017 年 26 巻 1 号 p. 66-72

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抄録

福井県で行われた対策型検診のデータをもとに,二重読影の検査精度,発見癌の特徴を検索した。05年4月1日から09年3月31日までの受診者を対象とした。地域癌登録を用いて検診真陽性,偽陰性を調査し,一次,二次読影,および二重読影別の感度,特異度を算出し,さらに乳腺濃度別に層別化して二重読影の効果を判定した。一次,二次単独発見癌の特徴も検討した。146例の検診発見癌と35例の偽陰性癌が同定された。一次,二次読影,二重読影の感度はそれぞれ62.4%,74.0%,76.2%,特異度は93.2%,93.1%,89.8%であった。二次読影を追加することで,感度は13.8%上昇し(p<0.01),特異度は3.4%低下した(p<0.01)。脂肪性,散在性,不均一,高濃度では,二次読影を追加したことによる感度の上昇はそれぞれ,8.3%,8.9%,20.6%,0%,特異度の低下はそれぞれ1.7%,3.1%,4.2%,4.2%であり,不均一高濃度でのみ一次読影と二重読影の感度の間に有意差を認めた。一次,二次単独発見癌29例の特徴では,若年例,高濃度乳腺例,その他の所見が多く,診断難易度の高いケースが拾い上げられていた。二重読影により癌の拾い上げに関しては良好に機能していたが,特異度の低下が認められた。不均一高濃度にて感度は最も上昇し,脂肪性や高濃度では感度の上昇はわずかであることから,背景乳腺濃度を個別化指標とした,より効率の良い検診体制を作り上げることが望まれる。

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