抄録
〔要旨〕【背景】防ぎえた外傷死亡の原因の多くは出血と報告されている。大量出血が予想される患者に対して大量輸血プロトコール(massive transfusion protocol;MTP)が取り入れられるようになったが,MTP発動時の輸血製剤の破棄の実態は不明である。【方法】2015~2019年に山梨県立中央病院高度救命救急センターに搬送され,MTPが発動された外傷患者の輸血製剤の破棄の状況について調査した。【結果】320例にMTPが発動され,23例(7.2%)で輸血製剤の破棄を認めた。大量輸血症例で10例,赤血球輸血を実施しなかった症例においても9例の破棄を認めた。もっとも多かった製剤は新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma;FFP)であり,解凍後に不要となり破棄されていた。MTP中止が遅れ,保管・認証方法の不備や破損によるものも認めた。【結語】MTPにおいて輸血製剤の破棄を減らすためには,FFPの解凍後の使用期限の延長による他の患者への転用や凝固因子の補充のためにFFP以外の製剤の運用,製剤の取り扱いに関するスタッフの教育が必要である。