日本応用動物昆虫学会誌
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2, 3の化学的処理に対する家蚕細胞質多角体病ウイルスの安定性
宮島 成寿
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1978 年 22 巻 1 号 p. 22-25

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抄録

家蚕細胞質多角体病ウイルスの精製,濃縮のために用いる適当な薬剤を調べるため,化学的処理すなわち,ethylenediaminetetraacetic acid (EDTA),塩化マグネシウム,四塩化炭素,クロロホルムおよびクロロホルム-n-ブチルアルコールによる各処理が家蚕細胞質多角体病ウイルス(CPV)の感染力におよぼす影響について検討した。
(1) EDTA処理については,CPV液に最終濃度でそれぞれ0.1M, 0.01M, 0.001MになるようEDTAを加えて蚕児に接種しても,無処理のCPVと比較して感染力の差は認められなかった。
(2) 塩化マグネシウム中の温度処理については,CPV液に最終濃度で1Mの塩化マグネシウムを加え,50°C, 60分間処理後蚕児に接種しても,無処理のCPVに比べて感染力の差は認められなかった。
(3) 最終濃度でそれぞれ5%,10%, 20%, 40%になるようCPV液に四塩化炭素を加えるか,または10%, 20%, 40%になるようクロロホルム-n-ブチルアルコール(1:1)を加えて処理した後蚕児に接種すると,四塩化炭素処理ではCVPの感染力は低下しなかったが,クロロホルム-n-ブチルアルコール処理では感染力の低下が認められた。
(4) クロロホルム処理では,CPV液とクロロホルムとを20:1の比で混合し,その遠心上清を蚕児に接種すると,2log以上の感染力の低下が示された。
(5) 以上のことから,CPVはEDTA,塩化マグネシウム,四塩化炭素に対しては耐性であるが,クロロホルムおよびクロロホルム-n-ブチルアルコールに対しては感受性である結果が得られた。なお,これらの結果,は,CPVの系統(4角形の多角体を形成する系統TC,6角形の多角体を形成する系統HC)による感受性の差は認められず,TC, HCはともに同じ傾向を示した。

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