抄録
1. 薬物の生物試験を行なうにあたって,供試生物のもつ大きさの変異の幅が広い場合は,その大きさに応じたなんらかの補正を行ないながら,投与薬量をきめていくことが必要である。長期同一形態を保って成長を続ける魚類において,それも野外採集個体を用いるような場合,また成長度の異なる異種の魚類の感受性を比較する場合は,とくにそうした考慮が払われなければならない。
2. 体重に基づくsize factorを算定して,体重換算薬量と致死時間の関係を方程式に求め,これによって感受性の程度を考察するならば,少なくとも大きさに基づく要因だけは,考慮の外におくことが可能なはずである。
3. この概念をもととして,浸漬法により,EI-43064に対するキンギョとドジョウの感受性を比較実験した結果,一定時間における致死薬量の比によって示したドジョウのEI-43064に対する感受性は,キンギョのそれより5.32倍高かった。薬液に投入されてから降伏までの時間のばらつきが,体重と薬量とによって説明され得る程度は,ギンギョ69.7%に対して,ドジョウは31.8%であった。この場合,ドジョウはキンギョより体重以外の多くの変異要因をもっていたということができる。