本研究の目的は熟練訪問看護師の観察の特徴を訪問看護熟練者と訪問看護非熟練者である訪問看護初心者,看護学生の眼球運動の比較に基づき明らかにすることである.観察場面は高齢者への初めての訪問看護場面とした.訪問看護利用者のデータから作成した2事例8枚の写真を10秒ずつ提示し,写真を観察する対象者の眼球運動をTobii-ProX60にて計測し,Kruskal-Wallis検定にて熟練者,初心者,学生の3群間を比較した.熟練者は療養者の表情と立ち姿が中央にある退室場面の総移動距離は3群間で一番短く,学生より有意に短かった(p < .05).部屋で会話場面の注視領域「療養者の顔と服装」の熟練者の注視回数は3群間で一番多く,学生より有意に多かった(p < .05).本研究より自宅訪問時の写真の観察での眼球運動にも療養者を中心としたケア実践の特徴が表れると考えられた.熟練者の眼球運動の初心者と看護学生への提示は,限られた時間での療養者の観察を可能にすることが示唆された.