日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
26 巻, 2 号
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目次
巻頭言
特集「第27回日本在宅ケア学会学術集会」
学術集会長講演
特別講演
教育講演
総説
  • 野村 政子
    原稿種別: 総説
    2023 年 26 巻 2 号 p. 50-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    行政保健師が行う「地域づくり」の行動や思考などの特徴について,国内の33文献を対象とした文献レビューから明らかにし,国の地域共生社会政策における「地域づくり」と比較して考察した.特徴は,保健師としての基本姿勢をもって公衆衛生看護技術を活用し,行政組織内の取組体制の構築とマネジメントをし,多様な主体が協働する基盤を地域の中につくり,住民の活動のプロセスに応じてコーディネートと支援をすることである.行政保健師が行う「地域づくり」は,国の地域共生社会政策における「地域づくり」と親和性が高く,関連事業において有効に機能する可能性が十分にある.保健師が行う「地域づくり」を関連事業において活用する際の留意点は,行政組織内のマネジメント機能と,住民や多様な主体による取組と行政の取組を総合的にマネジメントする機能の確保,保健師等の職員が地域に出向いて活動できる体制の確保である.

  • 横井 和美
    原稿種別: 総説
    2023 年 26 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    要介護高齢者の通所介護施設では集団に対する支援が必要とされている.本研究では,要介護高齢者の通所介護施設での集団支援の研究報告から集団を用いた理由や集団を用いたことの結果を抽出し,通所介護施設での集団支援における効果と課題を明らかにした.検索システムから抽出された21論文を分析した.

    結果,通所介護施設での集団支援プログラムには,運動機能向上,活動拡大,認知機能維持,口腔ケア継続があり,種々の専門職者が課題を提供した支援であった.

    集団を用いた理由には,提供課題の効果や個人と集団との組み合わせの検証,他者交流により課題の遂行や効果を目指したり,課題遂行で他者交流を図ることがあった.集団を用いたことで,提供課題の効果内容を確定しただけでなく,課題遂行で生じた他者交流の効果と必要性や参加者の参加継続や活動性の向上など二次的な効果を得たり,集団での個人反応と個人尊重の重視を認識していた.

  • 遠藤 美咲, 山本 由子, 亀井 智子
    原稿種別: 総説
    2023 年 26 巻 2 号 p. 71-85
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:2型糖尿病在宅療養者を対象とした遠隔モニタリングに基づくテレナーシングが,通常診療と比較してHbA1cなどの臨床指標に有効かをシステマティックレビューとメタアナリシスにより評価する.

    方法:CINAHL Plus with Full Text, PubMed, Embase, CENTRALを用いて文献検索を行い,1)2型糖尿病の在宅療養者,2)看護師による遠隔モニタリングに基づくテレナーシングの提供,3)通常診療と比較したランダム化比較試験,4)英語文献,5)対象者18歳以上,を適格基準とした.

    結果:8文献を採択した.アウトカムは全研究でHbA1cの有意な改善を示した.血圧は6RCT,BMI・血糖値は3RCT,体重は5RCT,コレステロール・中性脂肪などの脂質は4RCT,インスリン量・QOL は2RCTが評価していた.2RCT,計836人のメタアナリシスの結果,介入群でHbA1c低下が有意であった(mean difference = -0.23; 95% confidence interval = -0.45 to -0.01; I² = 0%; p = .04).参加者と医療者ともに隠蔽化が困難であり,二重盲検化の高リスクが示唆された.

    結論:2型糖尿病在宅療養者への遠隔モニタリングに基づくテレナーシング支援は,HbA1cの改善に有効であることが示されたが,バイアスリスクが高いためエビデンスの精確性は限定的である.

原著
  • 葛西 好美, 川口 孝泰
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 2 号 p. 86-96
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,地域包括ケアシステムにおける民生委員の役割について,当事者の語りをもとに明らかにすることを目的とした.A市在住で5年以上の経験を有する同意が得られた8名の民生委員を対象に,半構造化インタビューによりデータを収集した.分析方法は,解釈学的現象学的分析とText Miningを用いて実施した.その結果,民生委員は住民との信頼関係を構築して支援体制を整え,住民の意向に沿って健康・生活上の問題に対応していた.解決困難な問題に対しては,地域包括支援センターとパートナーシップを築き,住民と社会資源との調整を促進していた.また,民生委員同士の経験を共有しながら困難な課題を解決し,個々の対象事例の支援の質および安全を確保していた.本研究によって,民生委員は地域包括ケアシステムにおける,多職種との連携・協働を通した情報共有のキーパーソンおよび初動の支援者として,その役割の重要性が示唆された.

  • 島村 敦子, 諏訪 さゆり, 兪 文偉, 松島 英介
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 2 号 p. 97-110
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は熟練訪問看護師の観察の特徴を訪問看護熟練者と訪問看護非熟練者である訪問看護初心者,看護学生の眼球運動の比較に基づき明らかにすることである.観察場面は高齢者への初めての訪問看護場面とした.訪問看護利用者のデータから作成した2事例8枚の写真を10秒ずつ提示し,写真を観察する対象者の眼球運動をTobii-ProX60にて計測し,Kruskal-Wallis検定にて熟練者,初心者,学生の3群間を比較した.熟練者は療養者の表情と立ち姿が中央にある退室場面の総移動距離は3群間で一番短く,学生より有意に短かった(p < .05).部屋で会話場面の注視領域「療養者の顔と服装」の熟練者の注視回数は3群間で一番多く,学生より有意に多かった(p < .05).本研究より自宅訪問時の写真の観察での眼球運動にも療養者を中心としたケア実践の特徴が表れると考えられた.熟練者の眼球運動の初心者と看護学生への提示は,限られた時間での療養者の観察を可能にすることが示唆された.

研究報告
  • 鈴木 美代子
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 111-119
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,訪問看護師のスピリチュアリティと死生観,個人要因との関連を明らかにすることである.A県の全訪問看護ステーションに協力を依頼し,同意が得られた25施設122人の訪問看護師を対象に質問紙調査を実施した.このうち,得られ回答に欠損がなかった80人を分析対象とした.

    調査内容は,スピリチュアリティ評定尺度(SRS)と死生観尺度を用い,個人属性として勤続年数や看取り経験などで構成した.スピリチュアリティとの関連はSpearmanの順位相関分析と重回帰分析を行った.その結果,死生観尺度因子の〈死後の世界観〉と〈人生における目的〉は,全てのSRS因子とその合計得点に関連が認められた.訪問看護師の現世を超えた魂のつながりや自己存在の意義といった「生き方」に目を向けた死生観のとらえがスピリチュアリティに影響しており,それへの意識を高めることが在宅高齢者のスピリチュアリティを支えるケアの質向上につながる可能性が示唆された.

  • 原田 かおる, 長畑 多代
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 120-127
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的はCOVID-19感染流行期における高齢者への訪問看護において訪問看護ステーション管理者が感じた困難を明らかにすることである.管理者5名に半構造化面接を実施し,質的記述的に分析した.その結果,【互いの防護具装着によるコミュニケーション】【防護具を装着するなかでの観察や情報収集】【徹底できない感染予防対策】【感染不安により必要な治療・サービスを拒否されることへの対応】【思いがけない速さで進行するフレイルへの対応】【通所サービス休止による家族の介護負担への対応】【情報不足のまま本人・家族・訪問看護ともに不安のなかで始まる在宅支援】【医療体制の変化による訪問看護師の新たな負担増】の8カテゴリーが抽出された.訪問看護管理者は高齢者の環境や心情が変化するなか高齢者・家族,訪問看護師自身への影響による困難を感じていた.在宅療養高齢者への基本的ケアの重要性,スタッフ育成,有機的な連携の必要性が示唆された.

  • 茶本 啓恵, 花里 陽子
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 128-136
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的は,訪問看護師が終末期がん療養者の在宅看取りに向けて実践した看護を明らかにすることである.調査は,がん終末期看護を経験した訪問看護師を対象に,1事例を想起し退院から看取りに向けて実践した看護について半構造化面接法により実施した.分析は,質的記述的に類似性に基づきカテゴリー化した.分析の結果,看取りに向けて実践した看護は,【残された時間が少ないため必要十分な在宅移行の準備をする】【病状や不安に合わせ24時間対応する】【苦痛緩和に苦悩しながらも模索し続ける】【一人の人としてありのままを受容し向き合う】【最期まで生ききることを支える】【家族が役割を果たせるよう関わる】【旅立ちまで家族と過ごせるよう支援する】【多職種と死亡後の対応を調整する】であった.訪問看護師は,終末期がん療養者の在宅看取りに向けて,短期間に環境を整え,最期まで生ききれるよう支え,死亡後の対応も含め援助していると示唆された.

  • 村瀬 順二, 門間 晶子
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    [目的]A法人が取り組むリハビリテーション評価訪問(以下,評価訪問)に対する理学療法士・作業療法士(以下,療法士)の思いを明らかにし,今後の評価訪問への示唆を得ることである.[方法]A法人に在籍する療法士11名に半構造化面接を実施し,質的記述的に分析した.[結果]評価訪問に対する療法士の思いとして【役立つ喜びと成長する充実感】【関連業務が多い負担感】【プレッシャーと不安】【評価訪問の在り方についての葛藤と迷い】【評価シート活用上の困惑】【評価訪問の質を高めるための工夫と心構え】の6つが明らかになった.[結論]評価訪問の課題として,教育・支援体制の構築,質を高める工夫の共有方法,関連業務の軽減と明確化について検討する必要がある.また,現場で看護師と協働する中で得る学びは成長する充実感につながるだけでなく,他職種理解の点から連携を促進させうるものであり,在宅ケア全体にも通じる重要な要素である.

  • 戸塚 恵子
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    訪問看護ステーションを維持・向上に導いた管理者は,どのような課題や困難に直面し,乗り超えてきたのか,経営管理に関するプロセスを明らかにすることを目的とした.7名の管理者を対象に半構成的面接を実施し,M-GTAで分析した.結果は,管理者は利用者獲得,職員確保や育成,ケアの質の向上等の課題や困難を抱え【開設への想いと現実の間で直面する困難】があったが,【管理者として困難を受け入れ見出す価値】を考えていた.地域を基盤とした連携強化や資源活用は【葛藤の中で育つ看護と経営】となり,【実を結ぶ経営活動とやりがい】へとつながった.管理者は,引退後の【将来に向けたステーションの経営管理】を思慮していた.ステーションを維持・向上に導いた管理者の経営管理に関するプロセスは,管理者が地域基盤を大切に身近な資源を活用し取り組む中で,職員も管理者も共に成長し,ステーション全体が地域の中で成長していく過程でもあった.

実践報告
  • 菊池 有紀
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,自宅にて在宅高齢者が介護予防プログラム「活きいき体操プログラム」の実施を継続するのに,互助を用いた支援が有効かどうかの検討であった.

    A地区の在宅高齢者44名(自宅:リーダー群12名,メンバー群32名)と,介護予防教室に通う教室群23名(集団)を対象とした.自宅でプログラムを実施継続するためにグループを作成した.リーダー群・メンバー群(自宅)と,教室群(集団)について,2018年2・3月から7・8月のプログラム実施継続の割合,認知機能,うつ傾向,握力,開眼片足立ちを比較した.

    結果,リーダー群とメンバー群(自宅)において,介入前後で有意に低下した項目はなく,全ての群で9割以上の実施継続であった.

    在宅高齢者でグループを作成し「活きいき体操プログラム」を実施継続することは,教室群と同様の効果が得られると示唆された.実施継続の支援に,互助を活用することは有効であると考える.

  • 岡田 麻里, 長江 弘子, 仁科 祐子, 片山 陽子, 谷垣 靜子, 酒井 昌子, 乗越 千枝, 小池 愛弓, 坂井 志麻, 彦 聖美
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 161-169
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本実践報告の目的は,継続看護マネジメントを基盤に開発した多職種連携教育プログラムの実施とその評価をし,プログラム改善の示唆を得ることである.プログラム参加者はA病院と関連施設に所属する多職種チーム(7チーム:43人)であった.評価方法はプログラム終了後に自記式質問紙調査を実施した.調査協力者は31人(回収率:72.1%),看護師26人,社会福祉士・栄養士・理学療法士等の専門職種が5人であった.自己評価得点は研究協力者全体で「学びを他の参加者と共有することができた」が最も高かった.参加者の学びは,看護師は【多職種の視点で協働するチームの力を認識する】,他職種は【多職種の強みの発揮と連携の大切さを学ぶ】,さらに【対象・家族の目標を中心に考える視点の必要性を学ぶ】等,チームが共通の目標に向かう基盤づくりになった.多職種参加を促すため,CNMの理解を深めプログラムの時間配分の検討が課題である.

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