目 的
産褥期にある女性の精神障害は,その後の育児にも関係する。本研究は支援策を考えるうえで必要な妊産褥期別不安の程度と妊娠末期に産後うつ病の予測の有無,並びに各時期の不安に関係する要因を探ることを目的とした。
対象及び方法
対象はA市内にある3つの総合病院で出産した189名である。調査期間は2000年8月から翌年8月までと2004年6月から2005年1月までである。調査方法は妊娠末期と産褥期の5日・1ヶ月・3ヶ月目にSTAIを,産褥5日目にSteinのmaternity blues scoreを,そして産褥期5日・1ヶ月・3ヶ月目にEPDSを調査した。他に社会・経済的・産科学等の不安に影響を及ぼす要因をアンケートで調べた。分析には重回帰分析を用いた。
結 果
STAIの状態不安と特性不安は,前者が後者より,妊娠末期が産褥期より高かった。maternity bluesは産褥5日目で23%あり,EPDS得点が9点以上を示す産後うつ病の危険因子を有する者は産褥3ヶ月目に14.2%あった。また,不安要因として妊娠末期は,STAIから「出産の経験」と「姉妹の手伝い(の有無)」が抽出できた。そして産褥期は3つの尺度(STAI, Stein, EPDS)で測定したものから複数の尺度で抽出されたものは,産褥5日目は「夫の協力(の有無)」「経済困難」「妊娠契機」であり,産褥1ヶ月目は「妊娠契機」であり,産褥3ヶ月目は「夫の協力(の有無)」「妊娠の契機」であった。
産後うつ病予防に対する予測のチェック体制には,他の尺度と正の相関を示すことから,妊娠期にも使用できるSTAIが望ましいと考えられた。
しかし,重回帰分析からは妊娠末期のSTAIでは,特性不安のみが産褥期の特性不安と産褥3ヶ月目のEPDSに関連することがわかった。
結 論
今回の調査で,産後うつ病の予測に対しハイリスク者の抽出に,妊娠末期のSTAI(特性不安)で予測が可能であることがわかった。また,産褥の時期別に抽出された関連要因は,産褥期全体で夫の協力や妊娠の計画性等の生活環境の因子であることがわかった。妊娠末期,産褥期の時期に応じた支援の工夫が必要である。
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