日本助産学会誌
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原著
周産期ケアにおける助産師の手袋着用状況と個人的属性との関連
抜田 博子谷口 千絵恵美須 文枝
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2009 年 23 巻 2 号 p. 208-216

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抄録
目 的
 助産師が行う周産期ケアについて,血液・体液および排泄物との接触の多い手指の感染予防策として,手袋着用状況と個人的属性との関連を明らかにする。
対象と方法
 東京都内の分娩を取り扱う病院に勤務する189名の助産師を対象とし,自記式質問紙調査を行った。調査内容は,年齢や経験年数,院内感染対策への関心等の個人的属性と,血液および体液,排泄物を扱う10項目の周産期ケアにおける手袋着用状況を,「必ず着用する」から「着用しない」までの4段階で回答を求めた。分析は個人的属性,手袋着用状況を各々2群に分類し,ケアごとに個人的属性との関連を,χ2検定により分析した。
結 果
 177名(回収率93.6%)から回答が得られた。助産師の手袋着用状況は,分娩第II・III期の直接介助では100%,妊産婦の内診,胎盤計測・処理では98%以上が「必ず着用する」と回答していた。一方で,乳房ケアは74.1%,新生児のオムツ交換では64.1%が「着用しない」と回答していた。個人的属性と手袋着用状況との関連においては,ケア毎に関連する要因が異なっており,教育課程や感染に関する研修の有無,スタンダード・プリコーションの認知度で関連が認められるケアがあった。年齢,産科以外での臨床経験の有無は,どのケアにおいても関連が認められなかった。
結 論
 明らかに血液・体液の接触を避けることができないケアでは,ほとんどの人が手袋を着用しているのに対し,血液ではない母乳や新生児の便については,手袋を着用しない人が多かった。また,血液・体液に直接触れない場合があるケアでは必ずしも手袋を着用していなかった。
 看護師,助産師各教育課程や感染に関する研修受講の有無,スタンダード・プリコーションの認知度で着用状況と関連が認められるケア項目があり,感染対策に関する卒前および卒後教育の充実が必要であると考えられた。
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© 2009 日本助産学会
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