日本助産学会誌
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総説
母乳育児に関するアセスメントツール:文献レビュー
長田 知恵子
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2010 年 24 巻 2 号 p. 184-195

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抄録
目 的
 本研究の目的は,授乳期の母子の母乳育児に焦点をあてた既存のアセスメントツールを統合し,特徴および項目内容から構成概念の相違,有用性の視点から検討を行うことである。
方 法
 母乳育児に関するアセスメントツールについて,国内外の文献をキーワード検索し,Harris(1998)のIntegrative research reviewを参考にコード表を作成した。各ツールの項目内容を質的に吟味した。また,質問内容を因子として内容分析法を用いて分析を行い,各ツールが測定する構成概念を検討した。さらに,検索したアセスメントツールが用いられている研究論文を検索し,Victoria, Kate & Ros et al. (2000)の分類を参考にしてコード表としてまとめた。
結 果
 授乳期の母子を対象として母乳育児支援を目的に開発され,今回,項目内容まで入手できたのは,国内外合わせて10ツールであった。その内訳は,主に母乳育児全般を観るものや支援者のスキルを評価するものであった。ツールの質問項目は,【母子の心身の状態】【環境】【授乳に向けてのレディネス】【哺育行動】【哺乳後の変化】で構成されていた。なかでも,【哺育行動】に焦点を当てているものが多かったが,乳房の状態,特に乳汁の産生や分泌状態を直接観るものは少なかった。これらのツールを使用した研究は,16文献であった。IBFAT,LATCH等の質問項目が少ないもの,またPIBBSのように早産児を対象にしているなど,他のツールにない特徴を持つものは有効性が高いことが確認された。つまり,有用性のあるツールの特徴は,(1)項目数が少ない,(2)曖昧な表現がなく使用者の誤解を招かない,(3)1文章に1つの問い,(4)対象条件が明白である,ということが示唆された。
結 論
 現在,母乳育児支援を目的に開発されたツールは,【哺育行動】に焦点を当てているものが多く,乳汁の産生や分泌状態を直接見極めるツールはなかった。
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© 2010 日本助産学会
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