妊娠中の血漿総ホモシステイン値と朝食欠食の関連白石三恵
1,春名めぐみ
1,松崎政代
1,大田えりか
1,村山陵子
1,佐々木敏
2,村嶋幸代
31東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻母性看護学・助産学分野
2東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻社会予防疫学分野
3東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻地域看護学分野
目 的 妊娠期の朝食欠食は,胎児成長や妊娠合併症予防に必要とされている葉酸やビタミン類の摂取不足を導く可能性が高いことが指摘されている。主に葉酸やビタミンB
12の不足によって生じるホモシステイン高値は,子宮内胎児発育遅延や妊娠高血圧症候群の発症に関連しており,ホモシステイン値を増加させない生活習慣を持つことは重要である。本研究は,妊娠中の朝食欠食が栄養素摂取量や血液中の総ホモシステイン(tHcy)値,葉酸値,ビタミンB
12値に関連しているかを明らかにすることを目的とした。
方 法 埼玉県の産婦人科クリニックで妊婦健診を受診する妊娠初期から末期の254名を対象とした調査を2008年6月から12月に実施した。栄養素摂取量は,自記式食事歴法質問票を用いて評価し,各栄養素の測定誤差を排除するために密度法によって示した。質問紙調査と同時に血液を採取し,血漿tHcy値,血清葉酸値,血清ビタミンB
12値を測定した。本研究では,朝食欠食を「週に2回以上,主食を含む朝食を摂取しないこと」と定義した。
結 果 30%の妊婦が朝食欠食習慣を有していた。初産婦は,経産婦に比べ朝食欠食習慣を持つ者が多かった(p=0.005)。交酪要因調整後も,朝食欠食者では有意に血漿tHcy高値に関連していた(p=0.024)。しかし,血清葉酸値やビタミンB
12値,エネルギー調整した葉酸・ビタミンB
12摂取量には,朝食摂取の有無による有意差は見られなかった。
結 論 本研究では,朝食欠食に関連する要因が血漿tHcy値の上昇を導く一因となっている可能性が示された。しかしながら,仮説に反して,血漿tHcy高値と朝食欠食との関係を血清葉酸や血清ビタミンB
12の低値によって説明することはできなかった。妊娠合併症の発症に関連する血漿tHcy高値を予防するためには,朝食を習慣的に摂取するための工夫を妊婦とともに考え,朝食の摂取を推奨する必要があるかもしれない。
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