日本助産学会誌
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総説
妊婦の体水分バランスと予後に関する文献検討
中田 かおり
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2010 年 24 巻 2 号 p. 196-204

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抄録

目 的
 妊婦の循環動態・体水分バランスの変化と妊娠経過・予後との関連について文献検索と吟味を行い,助産実践における妊娠期の水分管理・水分補給の基礎となる知見を得る。
対象と方法
 医学中央雑誌web版,PubMed,CINAHL,Cochrane libraryと,国内外の産科学テキストおよび検索された論文の文献リストを用いて文献検索を行った。各データベース登録開始年から2009年8月5日現在に出版された,日本語および英語論文で,妊娠期の循環動態の変動あるいは妊婦の体水分バランスと妊娠経過・予後との関連について論じられた83文献を対象とした。対象文献をレビューし,言語,論文の種類,専門ごとに整理した後,研究内容ごとに分類し,得られた知見を,本文献検討の焦点ごとに統合し,検討した。
結 果
 妊婦の水分補給・補液の効果として,羊水量の増加を報告した研究論文が複数特定された。しかし,妊娠合併症の予防や治療を目的とした妊婦の水分補給・補液に臨床的な意義を認める研究成果は限られていた。妊婦の水分補給の実態を調査した研究は検索できなかったが,妊婦のカフェイン摂取と妊娠経過への影響と自記式調査票によるカフェイン摂取量把握の妥当性に関する調査は特定された。また,妊婦の循環動態と体液量の測定にはさまざまな方法が検討されているが,妊婦管理の一環として臨床実践に適切と思われる,非侵襲的な方法のみを用いた測定方法は,特定できなかった。今回の文献検討では,妊娠期の水分補給に関する保健指導の臨床的な根拠を示すことはできなかった。
結 論
 妊婦の水分摂取・補液と羊水量増加との関連,妊婦に推奨する摂取水分の種類を吟味する必要性,生体インピーダンス法を用いた非侵襲的な妊婦の体水分バランス管理の可能性が示唆された。今後,妊娠期の水分摂取の実態とその効果に関する調査,妊娠期に推奨される水分の種類・量の特定,妊婦にとって過度の負担とならない簡便な体水分バランスの測定方法・評価指標の開発が必要である。

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© 2010 日本助産学会
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