日本助産学会誌
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The experiences of pregnant women diagnosed with a fetal abnormality
Nao ARAKI
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2010 年 24 巻 2 号 p. 358-365

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抄録
胎児異常を診断された妊婦の経験に関する文献レヴュー
荒木奈緒
北海道大学大学院保健科学研究院
目 的
 本研究の目的は,胎児異常を診断され妊娠を継続している妊婦の妊娠中の経験に関する国内国外の文献とその知見を整理し,妊婦支援に向けて今後取り組むべき課題について分析することである。
方 法
 PubMed,PsycINFO,CINAHL,医学中央雑誌刊行会「医中誌WEB」をデータベースとし(収載:1998年~2009年),キーワード,prenatal diagnosis(出生前診断),fetal abnormality(胎児異常)をともに含む国内・国外の原著論文を検索した。この中から,胎児異常を診断された妊婦の妊娠期の心理・経験の本質を質的に探究・分析した12文献(国内文献4件・国外文献8件)を分析対象とし,各々の文献について対象,研究方法,結果を整理し,これまでに明らかにされている胎児異常を診断された妊婦の経験がどのような心理的枠組みから明らかにされているかを検討した。
結 果
 12文献の分析の結果,胎児異常を診断された妊婦の経験には,1)悲嘆,2)ジレンマ,3)不確かさ,4)愛着,5)孤立の5つの枠組みが存在した。胎児異常を診断された妊婦の経験は1つの枠組みでは説明することは難しく,複雑に融合していることが明らかとなった。また,妊婦の経験を個人にとっての意味から探求する研究が中心的であるが,経験の構造を社会との関係性から明らかにすることも試みられていた。
結 論
 胎児異常を診断された妊婦の経験は5つの枠組みの融合であることが示され,「悲しみの中にある人」にとどまらないという経験の本質が描き出された。しかし,これらの経験の何が生活者である妊婦にとって解決すべき問題となるのか,その問題の解決のために看護は何ができるのかについては十分に明らかにされていない。今後は,その経験が妊婦の人生や社会・生活の中の何に起因して起こっているのか,妊婦にとって解決すべき事柄は何であるのかという視点から理解し検討することが必要である。
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© 2010 日本助産学会
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